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ストーカー  作者: Mr.M
二章 葉月

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20/94

第20話 8月18日。木曜日。

8月18日。木曜日。

今朝のニュースで、

今更ながら宿禰市で起きた殺人事件の

被害者の名前が報道されていた。

被害者の名前は吉野佳乃。

当然のことだが初めて耳にする名前だった。



今日の予約は午前中の1件だけだった。

9時30分から

大場加奈子おおば かなこ

彼女は1週間に1度の割合で来店してくれる

超の付くほどのお得意様である。

まだ10代という若さにも拘らず

大人の色気を備えていた。

それもそのはずで、

仕事は水商売をしていると話していた。

夜の商売はよほどいい稼ぎになるのか、

来店時には差し入れを頂くことも多かった。

派手に着飾っている美人で

僕はいつも緊張させられていた。

そんな彼女の問題は話が長いことだった。

彼女の目的は施術ではなく、

単に自分の話を黙って聞いてくれる話し相手を

求めているだけなのかもしれない。


施術自体は10時30分に終わったのだが、

いつものように彼女の話は長く、

結局彼女が店を出たのは

さらに1時間後の11時30分だった。

1時間分のサービス残業の対価は、

ブランド物のTシャツだった。



彼女を送り出してから家を出た。

そして自転車で『クリーンマート』に向かった。

腹が減っては戦はできぬ。

その前に腹ごしらえだ。

今日は市営プールに行って

二四のことを探ろうと考えていた。

以前、

二四が月、木曜日が休み

と話していたことを思い出したのだ。

情報を集めるに当たっては

二四がいない方が都合が良かった。

殺人犯を探すうえで

相手にはこちらが調査をしていることを

悟られてはならない。

もし殺人犯にこちらの動向が知られてしまうと、

犯人は警戒を強めるだろう。

その結果、

殺人犯がどのような行動に出るかわからない。

つまり調査は秘密裏に且つ迅速に

行わなければならない。


『クリーンマート』の駐車場に自転車をとめて、

僕は若干の不安を抱えたまま店に入った。

レジには年配の女性店員が2人立っていた。

僕はサンドウィッチとコーヒー牛乳を

手に取ってレジに並んだ。

その時。

店の奥からこちらを覗く人影に気付いた。

店長の男だった。

男は僕と目が合うと

慌てた様子で奥へと引っ込んだ。

僕は小さな不安に駆られながら

会計を済ませて店を出た。


僕は帰り道にある『春日公園』に立ち寄った。

『春日公園』は神社の敷地内にある

緑豊かな公園である。

ビジネス街ではないので、

くたびれたサラリーマンや華やかなOLが、

昼間の一時の休息を楽しむといった風景は

見られない。

そんな彼らに代わって、

子供達が無邪気に走り回っていた。

公園を取り囲む木々が所々に日陰を作っていて、

母親達が日陰からそんな我が子の様子を

見守っていた。

僕は空いているベンチに腰を下ろした。

自然と溜息が漏れた。

その時。

公園の端にある鉄棒で懸垂をしている

半裸の男が目に入った。

男との距離は若干離れていたが

見間違うわけがなかった。

鍛え上げられた肉体と、

特徴的な風貌は間違いなく大烏だった。

大烏は短いインターバルを挟みながら

何度も懸垂を繰り返していた。

声を掛けるべきか僕が迷っていると、

大烏は鉄棒にかけていたシャツを手に取って

ゆっくりとした足取りで

こちらに向かって歩いてきた。

「やあ。

 こんなところで奇遇だね」

大烏はそう言って僕の隣に腰を下ろした。


僕達はしばらく世間話に華を咲かせた。

そして話題も尽きかけた頃、

大烏が

「私はこれから食事に行くのだが

 君も一緒にどうかね?

 前に君の誘いを断ったお詫びを兼ねて

 今日は私がご馳走するよ」

と口にした。

僕は少し迷ったもののその誘いを受けた。


大烏が車で来ていると言うので、

僕は一旦、

自転車を置きに家に戻った。

そして。

自転車の籠にレジ袋を残したまま

待ち合わせ場所へ小走りで向かった。


角を曲がると通りの先に

『シュガー&ソルト』の小さな看板が見えた。

若干息があがったので

僕は歩きながら呼吸を整えた。

その時。

普段見慣れたこの路地に不釣り合いな

真っ赤な車がとまっているのが見えた。

古い型の割に妙に高級感のある車体が

目を引いた。

運転席の大烏が手を振っていた。

「す、すみません。

 遅くなりました」

僕が助手席に乗り込むと

大烏は僕がシートベルトをするのを確認してから

車を発進させた。

意外と細かいところがあるようだ。

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