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ストーカー  作者: Mr.M
二章 葉月

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19/94

第19話 残った2人

この日最後の客を送り出してから、

僕は『シュガー&ソルト』へ向かった。



店の窓から漏れる灯りが

心なしか寂しそうに見えた。

駐車場には1台も車がとまっていなかった。

自転車を入り口の脇にとめて中に入ると、

「いらっしゃませ」

と元気なもしほの声が聞こえた。

「あら。

 八木さん、いらっしゃい」

もしほはテーブルを拭いていた手を止めて

背伸びをした。

同時に口を大きく開けて欠伸をした。

「何だか疲れてるようだね」

「そうなの、

 さっきまでお客さんが多くて。

 たまに忙しいとダメね、

 慣れてなくて。

 マスターなんて裏で横になるからって。

 もしかしたら寝てるんじゃないかしら?」

表の静けさは嵐の前ではなくて

祭りのあとだったようだ。

「タイミングが悪かったかな?」

僕は頭を掻いた。

「八木さんはお客さんなんだから、

 そんなこと気にしなくていいのよ。

 それに八木さんなら大歓迎よ、私は。

 待っててマスターを呼んでくるから」

もしほは笑いながら足早に裏へと消えていった。

店の時計は19時50分を指していた。


僕がカウンターに座ると、

すぐにもしほが戻ってきた。

「もう本当に寝てたんだから。

 大体もうすぐ私のバイトは終わる時間なのに、

 どうするつもりだったのかしら」

「本当に忙しかったみたいだね」

「そうなの。

 ランチが終わってからも

 ひっきりなしにお客さんが来たのよ。

 こんなことって

 私がここにきてから初めてのことよ。

 もうびっくり!」

たしかに普段のお店の状況を知っている

僕からしてもなかなか想像できない光景だった。

「何が『びっくり!』だ?

 昔はこれくらい当たり前だったんだぞ」

その時。

マスターが欠伸をかみ殺しながら出てきた。

「はいはい。

 じゃあ私はあがりますからね」

もしほはぺろりと舌を出してエプロンを外した。

「私も八木さんと一緒に

 何か食べてから帰ろうかな?」

そしてもしほは僕の隣に腰掛けた。

「おいおい。

 明人ちゃんの邪魔をするなよ」

「そんなことないわよ。

 ねぇ、八木さん?」

「う、うん。

 僕ももしほちゃんに

 聞きたいことがあったんだ」

「ほら、マスター聞いたでしょ?

 八木さんは私と話したいんだって」

もしほは勝ち誇ったように

腕を腰に当てて背筋を伸ばした。

そんなもしほを見てマスターは

小さく溜息を吐いた。

「ところでもしほちゃん、

 ここの常連さんで、

 いつも閉店前まで居る人のこと知ってる?

 40前後のちょっと雰囲気のある男の人だけど」

「う~ん、誰だろう?

 私はその時間までいないことが多いし、

 マスターは知ってるんじゃないの?」

もしほは首を捻ってマスターに話を振った。

「閉店まで居る人ねぇ。

 名詮さんのことかな?

 いつもカウンターの端に

 座ってる人じゃないか?」

たしかに言われてみれば、

見かけるときは

常にカウンターの端に座っていたかもしれない。

あの男、名詮という名前だったのか。

「あ~わかった、あの人ね。

 でも八木さんが他の人を気にするって

 珍しいわね。

 何かあったの?」

「い、いや、あの時間によく見かけるし、

 いつも一人だから

 僕と同じで独身なのかなって

 ちょっと気になってたんだ」

僕はそう言って誤魔化した。

「へー。

 あの人、独身なの?」

どうやらもしほは名詮のことは

それほど詳しくは知らないようだ。

「どうだろうな。

 独身かどうかは知らんが

 職場は稲置市にあるらしいぞ。

 家は道師市だったかな。

 結構遠いところから通ってるんだよ」

道師市は宿禰市の北に隣接している都市である。

僕のことを監視するのであれば遠すぎる。

どうやら名詮に関しては

容疑者リストから外しても問題はなさそうだ。

はたしてリストに残った人間は、

柏木と二四の2人である。


それから他愛のない世間話をして、

僕は21時前に店を出た。

そして自転車で少し回り道をしてから

自宅へ戻った。

背後に拭い切れない不安を感じつつ、

僕はそっと自宅のドアを開けた。

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