平和な任務
近隣の村で用心棒をすることになった。
というのも、噂では凶悪な賞金首が近辺の山に逃げ込んだとの情報があり、その警戒をするためだそうだ。近隣と言っても山を五つは越えた場所にあるし、普通に遠征にあたると思うのだが。
とにかく我が傭兵団は、稼業としてこうした用心棒のようなことも請け負っている。
ただ今回は、辺鄙な村からの依頼のため依頼料はそこまで高いわけでもないらしいが、いわゆる人付き合いというか、周辺への傭兵団の心証を考慮してもいるのだろう。マメなことだ。
とはいえ、手も抜けないし気も抜けない。
村長の家から出て来たニールのアニキが、癖毛の頭をぽりぽりとかいて集合をかけた。
「集合~」
どうやら村長との挨拶は終えたらしいニールニキの元に、恰幅の良い剛腕剣士のモッチ、元さすらいの凄腕剣士のドラ、そして俺と、そんな俺にぴったりと寄り添うようにエレンが集まる。
「辺鄙に見えて、この村は旅商人が結構な頻度で立ち寄るから、お前ら気を抜くんじゃねぇぞ~。やらかしたら一瞬で噂が広まるぜ~」
ニールニキはふぁ、とアクビをしており、非常にやる気がなさそうだ。
団にも自分にも旨味が薄いため、彼の態度がこのようになってしまうのは、まぁ理解はできる。
「そういうことなら、俺は村の人と話してくっかな」
「俺も好きに出歩かせてもらおう」
「はぁ……お前ら好き勝手に………んじゃ、俺は村長とまだ話し合うことがあるから」
モッチもドラも、割と自由だ。ニールニキはそんな彼らを羨ましそうに眺めた後で、また村長の家に戻っていく。俺はどうすれば良いのか尋ねたら「好きにすればいいんじゃね?」ときたもんだ。
うーん………。
思ってたのと違う展開。
「エレンはどうする?」
「ウチはソウジと一緒にいる」
「あ、そう」
………ところで、エレンに関しては、既に皆には周知されているのか、まるで背後霊のように俺の側を離れない「側近ムーブ」がすっかり定着してしまった。もはや団内の誰も、何もツッコミを入れてくれない。
なにコレ? なんで皆そんな自然なの? と思う。今こうしてアジトから離れた地に来ても、アニキ達は何も言ってくれない。
思えば、団長……オヤジの後釜の最有力候補がニールニキだろうから、モッチとドラがその側近ということになるのだろうか。あるいは俺も?
団内では割と普通にまかり通っている人間関係ってことだろう。次代の育成をおろそかにしないのは、組織が長続きするための大切な要素だからな。オヤジも考えてこの団内の風土を作り出したのかもしれない。
「ソウジ、考え事?」
「ん、おう」
ぼんやりと立ち尽くす俺のローブの裾を引っ張り、エレンはどこかに行きたがっていた。
「村のはずれに広い荒れ地があったよ。魔法の特訓とかできそう」
「じゃあそこで暇を潰すか」
「うん!」
今回の俺達の任務を知らないわけではないだろうに、エレンは眩しい笑顔を見せる。何とも呑気なことだ。とはいえ、俺達の他にアニキ達もいるのだし、そこまで気負う必要もなかったか。用心棒だの守衛だの、何かを守る任務というのは大半が暇な時間だからな。
「ソウジ、行こ行こ!」
「引っ張り過ぎるなよ、ローブが脱げるだろ」
ローブをてるてる坊主のように身に纏った俺達子供二人もまた、暇な時は好きに振る舞わせてもらうことにした。




