研究と日常
周囲に意識を巡らせる。
「一つ……二つ………いやもっと………」
これは、感知の練習だ。
言うなれば、他者の魔力を感知できるようになるため、いや、ひいては魔力そのものについての感覚を研ぎ澄ませる修行。
「………六つ。よし」
そして、俺は感知した方向に歩き出す。
それぞれ六方向。
対象を広げれば、もっと小さな魔力を帯びた虫などまで探知できたかもしれないが、厳密に方向を指定し、それなりの魔力を探す練習なので、今は構わない。
ガササッ
「……一匹」
探した方向一つ目。小動物が逃げていく気配を確認。感知は成功。実際に魔力を発する生物がいて、それを俺は感知できていたということ。
ガサッ……
「二匹」
方向二つ目もバッチリ。
―――この調子で六つ目まで確認し終え、いずれもウサギに似た魔物やヘビのような魔物など、小さき動物達の魔力を無事に感知できていることが分かった。
普通は、余程の手練れでも人間の気配を捉えるくらいが精々らしい。これは実はすごいことなのだとか。
「ふむ………俺、実はすごいのでは?」
元の世界ではサラリーマンでしかなかったが、異世界に来て魔力に関する素養があったと判明か。
まさか未知の才能が開花しているのかと思うとワクワクするな! いくつになっても俺も男の子ということか。
しかしワクワクしない方がおかしいだろ、こんなの。
「どうだった」
「六つとも、それぞれウサギが二匹にヘビが二匹、後はネズミと小さなイノシシみたいなやつでした」
「……そうか」
俺の研究を手伝ってくれていたオヤジの元に戻って報告する。
「………やはりな」
「? 何か、分かります?」
俺の研究結果を受けて、俺よりもオヤジに何か閃きがあったらしい。
「どうやらテメェの魔力に関するセンスは、ずば抜けているようだ。あのアルだって、数百年に一人生まれるかどうかってレベルの逸材だろうが………テメェは、さらにヤベぇ」
「やべぇ、ですか」
それはおそらく褒めてるんだよな?
あのオヤジにそこまで素直な感想を言わせるとなると、やはり俺の持っていた才能は、特に魔力に関してはずば抜けているのだろう。
ふっ。
「だが調子に乗んなよ。テメェはガキなんだ、技も多彩でセンスもあるようだが、戦闘経験じゃぁ歴戦の強者の足元にも及ばねぇ」
「あ、ハイ。もちろん分かっておりますとも、もちろん」
そうは言ってもワクワクが止まらない。いますぐ山賊を倒しに行こうとかは思わないが、じゃあ、やっぱり魔力について検証する方向で研究していたのは正しかったんだと分かって、いっそ山籠もりで魔法についてだけ研究していても良いかもとか思ってしまう。
そのうち、異世界転移のスゴイ魔法とか、自分で開発できたりしてな!
「………心配だな」
「えっ?」
「なんでもねぇ。いや、テメェはまず戦闘に関してはまだまだだったな。やはりそっちの特訓は続けてしかるべきだ」
「あ、ハイ。仰る通りで………」
調子に乗りかけたところを怒ってくれるオヤジの存在は貴重だった。
あの心優しい養親とは、見た目や気性など比べるべくもないが、しかしオヤジも心根の温かさは同等な気がして、少しほっこりした俺だった。
「ソウジ、やっぱりすごかったんだ……!」
「うおっ」
もはや忍者のように、どこから湧いて来たのか分からないレベルでオヤジの背後を取るエレン。
「だから驚かせんじゃねぇっての、このっ!」
「ぁイタっ!」
びっくりしたオヤジに咄嗟に頭をひっぱたかれ、自分の頭を軽くさすりながら、こちらに輝く目を向けている。
「テメェ、ソウジの側近たる自覚を持つのはいいが、ちっとは周りに遠慮をだな―――」
「ソウジ、ウチも魔法新しいのを考えたよ、見て見て!」
そうして使い物になるか怪しい、大道芸みたいな魔法をいくつか披露するエレンにもほっこりした。
総じて俺は傭兵団のアジトのある山奥で、当初は予想だにしなかった、ほっこりした日常を送っています。まる。




