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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
魔法研究・初級編

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束の間の

「ソウジなんて、ずっと城にいれば良かったじゃんっ!」

「えぇ……?」

 俺が城から戻ってからこっち、ずっとプリプリしているエレン。

 帰還直後は俺も皆に話をしたりと忙しかったから、目立った衝突はナシにしてくれていたようだが………朝の狩猟にと、いざ二人で出かけてみると、この通り。

「そんなにお姫様が良かったんだっ! なら、ずっとその人のお世話してれば!?」

「どういうことだってばよ……」

 俺としては、皆の所に戻ったら急にへそを曲げられた感じなので、対応に苦慮するばかり。

 話しかけるごとに今みたいな台詞が飛んでくるわけなので、取り付く島もないとは、まさにこのこと。

「なぁ、いい加減に機嫌直してくれよ」

「ソウジなんて知らないっ!」

「悪かったよエレン。心配かけて悪かった」

 傭兵団の他の皆は、良くも悪くも年長者。だから同期……いや同い年くらいの人間は、俺とエレンくらいのもの。

 せめて仲良くしてくれたらなぁと思うのだが、今はそれが難しい。

 俺も謝ってはいるが、なかなか許してもらえない。

 そもそも、『ソウジに対する褒美として一ヶ月の間我が城に住まわせる』的なことを約束していたらしい王様も王様だし、そう言い渡されて了承したオヤジもオヤジだし。勝手な大人達によって作られた状況が今なわけで。

 本人、つまり俺の(あずか)り知らぬところで色々な取り決めが行われていたとうことなので、その辺に関しては俺に非はないはず。

 となれば、今エレンが怒っているのは別の部分か。

 やはり、大人の事情を絶妙に聞かされていなかった彼女は、俺のことをそれはそれは心配してくれていたとみえる。だからこうして、心配していた自分が馬鹿みたいじゃないかと怒っているのだろう。

 ………うん。それだって、やっぱりオヤジ達が悪いと思うんだけどな、俺は。

 でも、謝る。こういう時は、そういうものだ。理屈じゃないのだ。動揺し、感情的になり、今だって半泣きになりながら怒っているエレンを宥めるには、そうするしかない。今は狩りの前にそれをすべき。

「エレン、心配かけたね」

「………っ!」

 面と向かい合っても目すら合わせてくれないエレンを抱きしめた。

 小さい頃、俺もよく養親に抱きしめられた。子供はこうすると落ち着くのを、俺は幼い頃の経験から知っている。血の繋がりとかは、関係ないらしい。

「………ほんと、だよっ! ウチ、めっちゃ心配したの、にぃ……!」

「ああ……」

 ぽろぽろと涙をこぼすエレン。

 もしかして、この状況を見る第三者がいれば、「なんだ、そんなこと」と呆れでもしたかもしれない。

 けれども、子供が泣く理由など、不機嫌になる理由など、得てして些細なことだ。

 些細なことで、不安になったりするものだ。

「ソウジ、もう、いなくなっちゃう、って………会えないかも、ってぇ………!!」

「うん、うん、心配かけてごめんよ、エレン」

 腕の中でわんわん泣くエレンの背を撫でる。

 しゃくりあげる彼女の華奢な身体に、確かな熱がある。

 ああ、これ、俺も落ち着くな。

 長らく、人と抱き合ったりなんてしていなかったのもあるかもしれない。

「ソウジ、ソウジぃ………!」

「ああ。俺はここにいるよ、どこにもいかない」

「ソウジっ……ぃぃ………!」

「……」

 言ってて自分で反吐が出る。何が「どこにもいかない」だ。

 いずれ俺は、元の世界に帰る。

 この世界との縁もそれまで。当初は、というか、今でもそう考えているフシが、確かにあるのに。

「ソウジ、ソウジぃ! そばにいて! ずっと、ずっと……!」

「ああ、もちろんだ」

 そう言って、彼女の美しいプラチナブロンドの髪を撫で梳いている間、俺は自分自身のだらしなさに呆れるのだった。

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