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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
お城に招かれて

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舌対の誓い

 ………えっ。

 俺が城に滞在し始めてからもうひと月が経とうとしちゃってるんですけど。

 気付けばこんなことに。

 どうしてこうなった。

「それはともかく、このフルーツうんめぇ~」

 俺が食しているのはブドウに似た果実だ。

 この世界のブドウなのだろう。

 皮ごと食べることができて、しかも俺の出身世界のブドウのような皮のえぐみもないときてる。

 こんなの、元の世界で売れば飛ぶように売れるぞ。というか皮も美味い。下手したら皮をすりおろしてりんごのすりおろしと混ぜても全然イケる。

「不思議ね、ソウジはこんなのも食べたことなかったの?」

「アジトでは干しブドウみたいなのはありましたよ。けど、あんまり美味しくなかったなぁ」

「じゃあやっぱり城に来て良かったでしょ!?」

「ん、まぁそうですねぇ……ぱくっ」

「うふふ、ソウジったら食いしん坊なんだから。こちらも食べなさい、いえ、私が食べさせてあげるわ」

「おっとこれは申し訳ない―――ん、美味い……ほんと、魔のフルーツだこれは………」

「ソウジったら面白い♪」

 しみじみとこの世界では初となる生ブドウを食し、美味しさに浸っていたが………アジトにも、おそらくこのブドウだと思われるものを干したのはあったんだよな。

 レーズンみたいにカピカピでしなしなのやつ。いや、粒の大きさからして梅干しが近いかな。

 そうなると美味しいはずなのだが………干せば防腐はできても甘さがぎゅっと濃縮するし、その甘い匂いを嗅ぎつけた虫がたかるから、それを嫌った誰かがすぐに塩をまぶしちまうのだ。台無しだ。

 まぁ、おそらく団内でもオヤジに近い立場の人が好きでそうしているのだろうから、それに対して下っ端の俺がどうこう言えるはずもないので、泣く泣くしょっぱいブドウを見ては悔しがっていたのだが。

 なんだしょっぱいブドウって。誰が好きなんだよアレ。

 しかし、食材をあえて不味く作るのは実際にあることなのだという話を思い出す。

 例えば元の世界において、とある軍隊では、食料の適切な配給のため、あるいは取り合いなんかを防ぐために、あえてレーションを不味く作っていたところもあったのだとか。

 おかげでつまみ食いの標的にならず、適切なカロリーを作業的に補給できる。

 ザ・保存食って感じだ。

 でも、いや、だから干し塩ブドウなんて誰が食うんだよ。梅干しの劣化版なんだよ。ご飯にもパンにも合わねぇよ。いや食うのに困ったら食うんだろうけどさ。

 でも、ああ、生で食ってこれだけ美味しいなら………今度、一命を賭す覚悟で、進言してみよう。

 管理はしっかりすれば、レーズン風だっていけるはずなんだ。

 この世界は、食に関しては本当に、本ッ当にッ……! 俺みたいなのはずっと悔しい思いをすることになるッ!

 その点、この城では元の世界の料理に引けを取らないくらいの美味しいものばかり出てくる。

 流石王侯貴族、うめぇもんばっか食ってんなという感想も抱きつつ、自分の舌が肥えて戻らなくなることも心配だったりする。

 ………いや、いいか。

 俺のレベルを下げるんじゃない―――そう、料理のレベルを上げるよう、俺が努力すれば良いのだ。

 少なくとも自分の口に運ぶ料理を選択する自由はある。

 俺は、負けない―――ッ!

「ソウジ、なんで泣いてるの?」

「美味すぎて感動しております」

「そ、そう!? じゃあ、もっと食べさせてあげるわ!」

「恐れ入ります。では失礼して、あーん」

 金髪ドリルロールの姫様に甲斐甲斐しく世話を焼かれながら、俺はこの世界の食の事情にも負けず、せめて舌だけは豊かに生きていこうと誓うのだった。

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