垣間見える、城内の
「こうっ!?」
「姫、お上手です」
「そ、そうかしら!」
………一週間、城内(のとある一室)で生活してみて、ふと思うことがある。
俺は一体、何をしているのだろうかと。
なぜ俺は今、同年代の姫様相手に魔法の特訓などしているのだろうかと。
「あんまり派手さは無いのよね」
「派手である必要もないかと」
「そんなことないわ、ソウジの魔法はすごかったもの!」
「……恐縮です」
美しい花々の咲き誇る庭園で、姫様は天使のように笑っている。無邪気でいいですね。社会人に足りないものを全部持っていらっしゃる。
「魔法を出す時に手を意識されているようですね。あまり肘を伸ばし過ぎず、もう少しリラックスされると、魔法の狙いがさらに精確になりますよ」
「ソウジの教え方、分かりやすい!」
「恐れ入ります」
………。
こんな「爺や」みたいなムーブ、漫画の中でしか見たことのないポジションに、まさか自分が、なんて。
思いもしなかったよ。流石、異世界ってやつだな。
ところでなんで俺は姫様に魔法を教えているのだろう。
城に仕える魔法の指導者的な人、いませんか。
俺だって修行中の身なんだ、むしろ俺の方が教わりたいくらいなのに。
それがどうした、今は姫様に魔法を教えながら、「恐縮です」or「恐れ入ります」BOTになっている。
もはや人格を忘れつつあるかのように。
「……ん?」
美しい庭園を見回していると、庭園を囲む回廊の一角をお貴族サマ一行が歩いて行くのが見えた。
多くは互いに会話しており、俺や姫様のことなど眼中にも無いようだが、その中の一人がこちらを見ている。
(なんだ……?)
俺は表情に出さないながらも訝しみ、視界の端にそいつの顔を捉え続けた。
あれは貴族の一人だ。格好からしていっとう身分の高い者だろう。というか以前、姫様の部屋にも出入りしていたオッサン貴族………いや、大臣だ。
忌々しそうな表情なのは、姫様に対してか、俺に対してか。元々胡散臭い顔つきだとは思っていたが、今はそれに輪をかけて胡散臭い。面倒くさそうだから、できれば関わりたくない。
「………ふむ」
城の中にも色々と人間模様があるようだ、なんて他人事な感想を抱きながら、彼が城の中に入って行くまで俺は彼を視界の端に捉え続けた。




