難しい情勢の中に育つ姫
「姫様は魔法とか使うんですか?」
「使えるわ……使えるぞ! 先生には褒められるんだから!」
「それはすごいですね、将来有望ということじゃないですか」
魔法というものの認識に、俺と彼女でどれほどの差異があるのかはまだ具体的なところは分からない。
魔法が好きなのは本当だろうけれども。俺に最初にねだってきたものが魔法を見せることだったし、関心は高いのだろう。
「ソウジこそ、私と歳も同じなのにどうしてそんなに魔法が強くなったの?」
「傭兵団で素晴らしい師匠に恵まれたことが一番ですかね。後は、実戦経験を積んで―――」
魔法だけでなく格闘技術・剣術も、この世界の人間に教えてもらったのは良い経験となった。
ドラの指導は的確で分かりやすい。オヤジも、あれで結構理論派だ。総じて、良い師匠に恵まれた。
もし感覚派が師匠だったら、理解力の低い俺はこれほど魔法も上達していなかっただろう。
およそ二年という歳月で大人に並ぶまでに成長したのは、我ながらすごいことなんじゃないかと思うが………この世界の基準がどの辺にあるのか分からないので、驕らないでおいた方がいいだろう。
魔力、というものが存在する世界における常識は、まだまだ完全に培えたわけでもないしな。
謙虚が一番。実力があるのに失敗する人間は、いつだって増長して失敗するのだ。
「すごい………私も頑張るぞ!」
「お互い頑張りましょう」
「ソウジが頑張ったら差が縮まらない! ちょっと待ってて!」
「んな無茶な」
そういえば、と。話しながら思い至る。
もう六日も一緒にいれば分かることもある。
その中で、姫様は口調に気を遣っているのが分かるのだ。
努めて……何というか、「勇ましい口調」を心掛けているように思う。二人の時、ふとした時に漏れるお姫様っぽい言葉が、どうにもそんな印象を抱かせる。
こちらがあえて砕けた言葉遣いをしたところで咎めることもない。
ということは向こうの事情か。
「ソウジは………話しやすいな」
「ありがとうございます。そう言っていただけて光栄です」
ぽつり。
俺が考え事に耽っていたためか、姫様の方でも同じように何か考え込んでいる様子だった。
ソウジ「は」という言い回しにある通り、普段、実はそれほど自由に振る舞えていないのだろう。
「恐れながら、姫様も、話してみて大変に楽しいお方だと思いましたよ」
「……! そ、そうか!」
ぱぁ、と花の咲くような笑顔を見せた姫様。
どうやら人間と魔族とが戦争をしている世において、こういう笑顔は守らなければならないのかもな、などと、漠然と思った。




