お転婆姫と城生活
城での生活も五日目になった。
「ソウジ、お腹が空いたの?」
「はい」
「それじゃあ給仕に何か取りに行こうかしら! きっとまだ何か残っているはず!」
「恐れ入ります」
「行きましょ!」
「………はい」
一瞬「えっ、俺も!?」とか思ったが、確かに姫様一人で行かせるのは道義的に………いや俺的には良いことはない気がするが、しかし部屋を一緒に出てしまった。
「♪」
「………」
鼻歌を歌いながら俺の手を引いて歩く姫様。この子供を気絶させたら、今すぐにでも城を出ることは叶うだろう。
しかし、果たして今後を思えば、明らかに危険な立ち回りだ。
この隙にでも、傭兵団の他の皆が本当にこの城を出ているのかどうなのか、確認したいところだが………食堂までの道すがら、傭兵団の誰も見かけないし、誰か滞在客がこの城にいるという気配もなかった。
うーん、鳥籠。マジで籠の中の鳥。
「ソウジ、ワインは?」
「遠慮しておきます」
「そう………お父様とか皆飲んでるから、男の人は皆飲むものとばかり思ってた」
「人によると思いますよ。俺は男ですが、まだ子供なので控えるようにしているだけです」
「そうなのね」
ひとり晩酌で酒に溺れる社会人やってました、なんてことは言わない。本当は缶ビールとか缶チューハイとか飲みまくってるところで異世界転移しましたなんて、ここで明かすことでもないからな。
「何かないか………探してみる!」
誰もいない食堂で自由に戸棚を開け閉めするお姫様がお転婆すぎて、見ていて微笑ましい。
髪型はドリルロール金髪でいかにも姫様っぽいのに、行動力があって元気なのもいい。子供はこうでなくっちゃな。俺みたいに色々考え過ぎるのも、ちょっとアレだし。まぁ、俺は中身がサラリーマンなのでノーカンか。
「あら、こっちにパンがある。でも硬い………」
「できれば柔らかい方がいいです」
ここの世界、硬いパンを好む層も多いが、俺は柔らかいパンの方が好きだ。
「そうね、私もそう! ソウジとは気が合うわね!」
「恐縮です」
それはそうと、姫様と城内を探検している気分で、俺は少し楽しいと思うのだった。




