世情に思いを馳せる
俺が城から脱走しない方がいい、というのは分かったが、しかしそれにしては厳重だとも思っていた。
鳥かごに入れられてしまった可哀想な一般人くらい、放逐したって別に構いやしないと思うのだが………そうはいかない事情があるのか。
聞けば、許可証なりを携帯している身内に対してだって、持ち物検査のようなことをしているそうじゃないか。
何だか厳重だと思った。
「なんか………その辺かなり厳しい、というか厳し過ぎません?」
王族のいる城なのだから当然かとも思いきや、軟禁生活中は姫様を相手にしている時間以外、もっぱら俺の話し相手になってくれている衛兵の男性が、質問に答えてくれた。
「厳しいというか、ま、普通かもしれんな」
「言うほど普通ッスかね?」
「王族が住んでるんだから当然とは思わないか?」
「それにしては、何というか………何か、焦ってるように感じたんスけど」
「ああ、そうか、知らん可能性もあるのか………」
「?」
俺の反応に何か思い至った様子の衛兵は、ボソッと独り言を呟いた後、衝撃の発言をする。
「戦争やってんのさ」
「戦争……ですか?」
思わぬ言葉が出て来て、俺としては一瞬だけ思考が止まる。
「どこと?」
「魔族だよ」
「魔族………」
そんなことも知らなかったのかと、「やっぱり」みたいな反応をされた。おのぼりさん感が出てしまっていたか。
ただ、良い機会だ、聞いたことのない話だったので少し詳しく聞いてみる。
「すみません、俺、田舎者過ぎて知らなかったんですけど、世の中では人間と魔族が戦争してるってことですか?」
「そうだ」
「魔族……って、魔物みたいな人間ですか?」
「ま、似たようなもんだな。エルフみたいなのも一部の過激派が参加してるらしくて、そういう亜人みたいなのが余計に戦争をややこしくしてる」
「へ、へぇぇ………」
エルフ。亜人種。
戦争。
俺には馴染みのない世界の話過ぎる。ファンタジー世界のものだと思っていた単語が、薄暗い現実にあり得る単語と一緒くたになって、この世界の住人の口から出て来た。
衝撃的だった。
そうか………と、余り歓迎したくない現実に納得する。
俺はもう異世界に染まったつもりでいて、この世界のそういったものを、まだまだ享受していなかったということだ。
「ここはまだ平和なのさ」
姫様が入って来る時にいつも「バァン!」と開けるあの扉を見ながら、衛兵はどこか遠い目をして言うのだった。




