ひと狩り行こうぜ
半年ほど経っただろうか。
俺もここではすっかり慣れて、「新入り」ではなく、名前で呼ばれるようになっていた。
毎日の労働も苦にならなくなり、歳相応、というには少しばかり筋肉質な身体になってきたと思う。
見てくれこの上腕二頭筋。とても十歳か九歳とかそこらの筋肉ではないのだ。過去の俺からは考えられない筋肉の付き方である。マッチョというほどではないが、既に細マッチョを名乗って良いのではなかろうか。
いや謙虚にいこう。俺なんぞまだまだ。我が肉体には、まだまだ輝く伸びしろが――!
あと見てくれ、この少年細マッチョ筋肉による華麗な洗濯を! 洗濯板と安っぽい無臭石鹸により、汚れがみるみる落ちていく!
ちなみに俺ことソウジクリーニングサービスの仕上がりは、評判も上々。乾かし方にもこだわっているので、着心地がいいと好評なのだ。着心地を気にするのはお貴族様くらいらしいが。というか貴族にはまだ会ったことがない。俺も一人前になったら、各地を見て回れるのかな……!
………と、そんな折である。
いつも通り、日課の雑用をこなしていた俺のところへ、誰かが近づいて来る気配があった。
「おいソウジ!」
「はい!」
決してそういった役職があるわけではないが、何だかんだと俺の世話係みたいになっていたニールのアニキが俺を呼んだ。
「オヤジが呼んでる! すぐに行って来い!」
「はい!」
何だろう、と思いつつも洗濯を中断してオヤジの元へ向かう。ニールニキから「オヤジは前広場だ」と情報をもらったので、そちらに。
すると―――いました。
強面のむくつけきマッチョ中年男性が、恐ろしい顔で俺を待っていた。
「狩りに行く。ついて来い」
「……! はい!」
どうやら俺は、この傭兵団の狩猟部隊の見学を許されたようだった。




