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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
お城に招かれて

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引き留められ

「あんなすごい魔法が、しかも無詠唱で使えるのか!? えっ、他にも!? 私と同じ歳なのに!」

「アハハ……」

 姫様に無事(?)気に入られることで何とか切り抜けたイベントも、終わってみれば再びのイベント。

 本来の予定では、俺達は今日の昼過ぎには王都を発っているはずが―――まだ、帰してもらえていない。

 他ならぬ姫様が俺を引き留めるものだから、衛兵達を含めた王城の連中に「やれやれ」みたいな空気が流れている。そんな感じで、俺は今も王城の中。姫様の部屋や庭園を行き来しながら、様々なお話や魔法の実演をねだられていた。

 さながら家庭教師………いや遊び友達か。

 同年代は珍しいのだろうか、いやそんなはずはない。貴族達にだって娘や息子はいるだろうに、やはり平民との接触は刺激的ということだろうか、姫様はやけに俺にご執心のようだった。

 一難去ってまた一難。

 帰りたい………というのが正直なところだ。

 オヤジやエレン、ニールにモッチ、ドラ………皆、どうしてるかな。

 ………………………まさか、皆はもう帰ってたりしないよな?

 一応帰り道は憶えているが………それにしたって、やはり傭兵団の皆の顔が見えないのは何だか不安になる。

 別室で待機か、ああそういえば褒美を取らすとか言ってたな、ってことはどこか別の場所で歓待でも受けているのか………いや、俺にもダンジョン攻略の分け前である「魔石の原石」じゃなくて、王国側から報酬があるはずだ。後で大半が傭兵団の共有財産となるにしたって、俺個人が使える小遣いくらいは、自分で選び取ったものがいい。欲はかいていないよな?

「ソウジの魔法はすごいな………何というか、激しいのに美しいぞ」

「恐れ入ります」

 魔法が派手と言われているみたいだが、高圧の水が岩を一定の大きさに切り出したり、手から放った火の魔法の火力を自在に調節して大道芸っぽいことをしてみたり、思いつく限りのパフォーマンスをしたせいだ。明らかにガラじゃないが、必要に迫られれば、人間、土壇場を切り抜けられるものだ、なんて。

 自分を褒めてやる間もなく、もう何度目かになる姫様の部屋に引っ込んで、今度は冒険のお話。

 山林に出てくる獣を狩猟したり、魔法の修行に明け暮れた日々のことなんかを語り聞かせる。

 その中にはもちろん、直近の冒険―――ダンジョン攻略の話もあった。

 俺の奥義たる【魔装体術(マジックアーツ)】の部分は伏せて話す。そりゃ“奥義”だからな、オヤジ達にはともかく、部外者には秘密だ。

「するとソウジは、今まで何体の魔物を狩って来た!?」

「―――姫様は、今まで食べたパンの枚数を憶えておいでですか?」

「憶えてない!」

「フ―――それと同じ、というわけです」

「なるほど!!」

 話し疲れているのもあり、俺もテンションはテキトー。話にも誇張が混じり始めた頃。

 俺も姫様も姫様自身の部屋にいるが、その中に豪華な衣服を着た胡散臭い顔つきのオッサンが入って来る。貴族……いや大臣って話だったか。

「―――姫。そろそろ……」

「えぇ? まだソウジと話し足りない!」

「わがままを仰いますな、お身体に障りますぞ」

 ちらり、とこちらを見た胡散臭いオッサン大臣は、なにやらゴミを見るような目を俺に向けてくるが、今はこのひと時を切り上げてくれるありがたい存在だ。

「むぅ………ではな、ソウジ。また!」

「え、ええ、また………」

 そんな感じでドリルロール金髪の姫様の部屋から退室することを許され、俺はようやっと肩の荷が降りた気分で入口へ向かう。

 扉を開けて廊下に出ると、わずかに温度が違い、涼しくなった気がした。

 入り口の両側に立つ部屋の番兵さん二人組に軽く会釈し、俺は姫様の部屋を後にする。

「「………」」

 その際、微笑ましいものでも見るような視線を向けられた気がするが、それは俺が姫様と同年代だからだ。これで俺の見た目が違えば、憐みの視線に変わっていたことだろう。子供のお守りご苦労様、と。

「ふぅ……。疲れたな」

 思ったのだが、子供というのはテンション高いというか、加減を知らないのだ。長距離走で大切な「ペース配分」の考え方が頭にない。すぐに疲れて電池切れになるのも構わずテンション全開で生きているから無理もないが、肉体と魂に十歳強の差がある俺としては、肉体的にはともかく気疲れしてしまって仕方がない。

「それを言ったら、うちのエレンはかなり良くできた子供なのかもな………」

 王城の廊下を自室へ歩きながら、身内の利発さに今さらながらに思い至り、感謝すると共に、何となくエレンの顔が見たいと思う俺だった。

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