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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
ライフ・ライク・ローグ

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成長の導(しるべ)

「ソウジ、オヤジが話があるってよ」

「へい」

 ダンジョン内では基本的に隊列を組んでの戦闘だが、休憩は多少隊列を崩しつつ、見張りを立ててのものになる。見張り番のニールニキに断りを入れつつ、オヤジのところへ向かった。

「テメェは強くなる」

「………はぁ」

 何を言われるかと思えば、俺が将来強くなる、っぽいことを言いたいようだ。

「いいか、器用貧乏は結局のところ必要とされねぇ」

「そうですか?」

 そして、そうかと思えば、今度は進路指導みたいな話になる。

「テメェも経験を積めば分かる。だがそうしたところで気付いたら遅ぇ、なんてことが普通にあるんだ。世の中にはな」

「……はい」

 器用貧乏が必要とされない………なるほど一理ある。

 だがそれは、やや一面的なものの見方かと思う。

 それは様々な物事を一定水準以上にこなせるということでもあり、長所でもあるからだ。

 ただ、物事を「普通に」こなせるだけであれば「代用が利く」ということでもあり、そしてそれは確かに個人の必要性が薄れることに繋がりかねないということでもあるが。要するに、あくまでレベルの高い者の集まりになればなるほど、器用貧乏は必要とされなくなる、ということ。

 ………いや、オヤジは“そこ”を想定しているのか。そのレベルでの話をしているのか。

 少し説得力のあり過ぎる雰囲気が気になるが………オヤジは戦闘面ではプロフェッショナルだ。器用貧乏という印象は受けないにしろ、確かに「何でもこなす」印象はあるな。

 言うなれば「器用貧乏」ではなく“万能”なのだ。

「テメェは強さを極めろ」

「強さを、ですか?」

 オヤジが俺にそう言う意図は分からないが、少なくとも俺の「戦闘に関するスキル」が彼のお眼鏡に(かな)ったのは確からしい。

 そうは言ってもな………。

 殺したり壊したり、そうしたスキルを極めたところで、俺が元の世界に帰れるのかと問えば、そこには疑問が残ってしまう。

 もちろん、生き残ることは大切……というかそれが最優先だ。

 しかし、結局のところ、この世界で名声を博したところで、万人にウケたところで、それは俺がこの世界にとどまる理由には―――。

「テメェはどうにも、殺害っつー用途の魔法とは違う魔法が好きみてぇだからな」

「それは、まぁ………」

 確かに。

 俺の【ウォーターカッター】だって、元の世界の知識を活かしたくて、そうしたら実現できて―――といった代物だった。

 水で人を斬りたくて編み出したわけでもない。

 単純に硬いものを加工もしやすく便利だな、と思った当初とは、また魔法の使い方が違ってきているのも事実だが。

「色々な技に浮気しちまうなら仕方ねぇ―――それなら、“()()()()()()()()()()()

「………」

「それが俺からテメェに言うべきことだ」

「………………はい」

 オヤジは言うだけ言って、元の配置に戻って休めと命令してきた。

 えっ? 話って、これで終わり?

 俺はオヤジとの会話を反芻しつつ元の場所に戻り………何とも要領を得ない会話だったなと思う。

 唐突だとは思うが………しかし、オヤジだって「言っておかなければ」と思ったからこその、このタイミングだったのだとすれば。

 戦闘中の俺の様子をちらりとでも見て、彼に危機感を抱かせるだけの危うさが、俺から見て取れたということでもあるかもしれない。

「“万能”を超える“全能”か………」

 オヤジの話を総合するに、要するに「器用貧乏」ではダメなのだ。

 つまり、色々なものを極める指針をとるにしても、「やるなら徹底的にやれ」ということではなかろうか。

 この辺は………俺がもし肉体相応の魂年齢だったら絶対に汲み取れないだろ、とは思うが。

 俺が元サラリーマンで良かったなオヤジ……いや、あるいは彼も、俺が少なくとも魂の年齢的には成人した人間だからそういうアドバイスをしてくれたのだろう。

 幸いにして、俺には、この肉体には、まだまだ成長の余地がある。

 どのように成長するかは、やはり今後のお楽しみ、ということだろう。

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