あっ、そういう………
石炭みたいな魔石―――つまり遠赤外線を発する、不思議な魔法の石を焚火代わりに、調理に使ったり、暖をとったりすることしばらく。
野盗はいないが魔物はいるので、見張りは一人以上立てる必要がある。
「俺が見張りやりますよ」
「おー、悪いなー」
と言いつつ、真っ先に休むつもりだったろうというのは指摘しないでおく。
ニールのアニキも流石にお疲れのようだ。それはモッチもドラも例外ではない。前衛はヘトヘトなのか、見張りが俺に決まると早々に寝息やイビキを立て始めた。
「ハハハ………」
俺も決して手を抜いていたわけではない、それは断言できる、が、体力に余裕のある者が見張りをしていた方が良いだろう。
奇襲などがあったら、後で休むつもりの人員が満足に休めぬまま移動することだって、長旅にはつきもの、だからな。
後は………オヤジはもちろん、何とアル……エレンにも、疲れはほとんど見えなかった。
とはいえ。
そのことと休まないのとは別なので、既に小部屋の外へと歩き始めていたオヤジと、そしてこんな時も俺の後をついて来るエレンに声を張った。
「あの、見張りなら俺一人で充分ですよ。オヤジ、休んだ方が。それにアルも」
「「………」」
それぞれ意味合いの違う沈黙。
オヤジはこちらをちらりと見るだけでまた歩き出してしまったが、アル―――エレンは頻繁にこちらをちらちら見ている。
懐かしい。虫の居所が悪い上司と、上司をそうさせた後輩の雰囲気に似ている。謝罪をしても許されない場合はどうしようもない、そんな時は帰りに店にでも寄って愚痴大会、だが―――今回はそうした状況とは、見た目は似ていても実情は全く異なる。
小部屋の外に三人で出た。
オヤジ、俺、エレンの並び。エレンが、俺越しにオヤジを気にしており、何か言いたそうにしていた。
「………………………………オヤジ、は」
この気まずい空気が少し面白かったので俺も黙って眺めていたが、やがて意を決したようにエレンが口を開いた。
物怖じしないプラチナブロンドの髪の美少女が、むくつけき歴戦の猛者・オヤジに勇気を持って口を開く。
「オヤジは………………ソウジを、どうするつもりなんだ?」
「………」
おっと意外。
これに顔色一つ変えなかったオヤジとは異なり、俺は少し驚いて彼女を見た。
「だって、おかしいじゃないか。今回のダンジョンって、王都の強者冒険者が皆依頼を降りてるって話だ。だからそんな危険な探索に、ニールも、モッチも、ドラも、連れて行くのは分かる。けど、ソウジは分からなかった」
「………」
……なるほどな。エレンが今回俺について来たのは、それが理由だったか。
傭兵団の中でも屈指の精鋭部隊に、団内では一番新米である俺が選ばれた理由。
それを訝しんだエレンが、今回はやけに俺について来たがり、結果こうして同行しているわけだが―――。
「オヤジ。オヤジは、ソウジをこれからどうするつもりなんだ」
「………」
オヤジの凄みのある視線がエレンを見る。
「……っ!」
一瞬だけビビるエレンだが、それでもここは退けないとばかり、キッ、と視線を鋭くした。
感情的なようでいてしっかり頭も回る。この世界の子供は大したものだ。あるいはエレンが特別利発なのかもしれないが。
「さぁオヤジ! オヤジは、ソウジをどうするつもりなんだっ………!」
震えるエレンが問う。
恐怖か、怒りか、両方か。
何にしても責任感が強い気がするが、そんなエレンにオヤジは―――。
「……フン。ガキのくせに察しは悪かねぇみてぇだな」
ニヤリ。不敵な笑みを浮かべて。
「次の次………だろうな。代替わりを考えたら、テメェらが将来、俺らの団を背負う人材に育つと思ったから。ただそれだけだ」
「「―――へっ?」」
オヤジがバラした計画、その衝撃のカミングアウトに、俺もエレンも揃って目を丸くしたのだった。




