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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
ライフ・ライク・ローグ

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謁見

『――――』

『――』

『―――』

 既に現地入りしていたらしいオヤジ。

 むくつけき、そこらの荒くれと大差ない見た目だが、その辺の荒くれよりも格段に「歴戦の猛者」感の溢れるおっさん。全身古傷だらけなので、近くで見れば見るほど圧倒されるような風貌なのだ。

 そんな人物が、煌びやかな装飾の施された衣服をまとう、王冠まで頭に載せた、どこからどう見ても「王」そして「王妃」である二人を前に、怖じることなく話し合っている。やっぱ只者じゃねぇわ、あのおっさん。

 その様子を眺めつつ、謁見の間に通された俺、ニール、モッチ、ドラ、エレンの計五名は、すぐに片膝をついて(こうべ)を垂れる。謁見の間の奥に設えられたあの豪華な椅子に王族の誰かが座る前に、謁見を許された者が待機していなければならないルールらしい。いや、ルールというより礼儀といったものだろうか?

 ……正直、こうした場での振る舞いとか分からん。前世でもパーティーっぽい催しへの出席なんて数えるほどだったし、それも会社の新歓とかそういった場の話だ。

 事前の打ち合わせである程度の振る舞いと、「余計なことは言うな」とだけ言われていたこともあって、今は何とかなっているだけ。

 心臓はバックバクだ。

 今このタイミングで頭を上げたら首を刎ねられるんじゃないかとか、全く笑えない冗談みたいな妄想に思考を逃がす始末。

 いやはや、この世界の人間が一体どんな倫理観を持ち、どのようなルールの中に生きているのかを学び出した段階の人間に、いきなりの一大イベントだ。

 一言で言えば、帰りたい。帰りた過ぎる。しかしこうした場での振る舞いを学ぶことも後々、役に立つ………んだろうか? もう分からない。




 やがて、王様と女王様だろう二人がこちらに気付いたところで、オヤジは俺達に合流し、無言のままこちらに背を向ける。

 既に(ひざまず)いている俺達の前で、オヤジもまた同じように跪く。片膝をついて首を垂れ、厳かな表情を浮かべる。

 オヤジの背中越しの向こうでは、あの二つの椅子に王様と王妃が腰かけたのが分かった。

「ムジーク。その方らが―――」

「ええ。俺んとこの有望株、五名です」

 やや砕けた口調ながら、それでもオヤジの敬語は初めて聞いたかもしれない。荒っぽい野太い声が、今はやや丁寧な調子だもの。

 ああ、オヤジから見ても、本当に偉い人を相手にしているのだな、とぼんやり考えた。

 俺の頭も、緊張のせいで上手く回っていない。帰りたい。オヤジがかしこまるって相当だぞ。

 というかそもそもにおいて、いち傭兵団のゴロツキ数名が………王都の王城にて、国王・王妃と謁見できるというのは、やはり破格の待遇なのではないか。

 いや、俺がこういう「王国」というやつのことを知らな過ぎるのもあるかもしれないが、おそらく予想はそれほど外していないと思う。

 ………うん。

 俺など特に、場違いだ。

 どうしてこうなった。

 ただ難易度の高いダンジョンに挑むにあたって、国の重鎮……どころか、一番偉い人に謁見する意味は。

 なんだ、もしかして今回は、いつも以上に失敗の許されない―――懸かっているのは個人の首どころではないような―――超☆重大案件ということだろうか。

 失敗したら俺達が死ぬだけじゃなくて、傭兵団そのものが一掃されるぞ、みたいな。

 いや待て、それは流石に被害妄想というものだろう。

 いやいや待て待て、それも分からない。本当にオヤジや俺やニールにエレン、というか皆の首を守るため、慎重に行動する必要があるだろう。

「―――その方らの働きに、期待しておる」

「へい。必ずや期待に応えて見せましょう」

 俺が色々と益体の無いことを考えているうちに、謁見は終わってしまった。

 ………あれっ。

 ミンナフツウニタイシツシテイクヨ? マッテホシイナ。オイテカナイデホシイナ。

「(何してんの、ソウジっ)」

「(あ、ああ)」

 ………エレンに小声で呼ばれ、俺は皆の背中を追いかけ、すごすごと謁見の間を後にする。

 きょろきょろと田舎者らしく辺りを見回すふりをして、せめて最後に謁見の間を見てから退室する。ちょっと、冷静さを欠き過ぎていたことを今さらながらに反省したのだ。

 見えるところに不自然な点はない。部屋の隅に近衛兵が何人か待機している。いずれも凄腕の人物。

 そして謁見の間用の玉座に腰かけた王も王妃も、やはり歳相応、役職相応にかなり落ち着いている。

 ―――して、最後。

 謁見の大扉が閉まる直前、扉の隙間に見えた景色の中で―――あの、玉座みたいな豪勢な椅子に座る、あの白髭―――あれが王様か―――と、目が合った気がした。

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