王都へ
「おいおいおいおい」
見渡す限り、人、人、人―――。
「おいおいおいおいマジか」
大通りに並ぶ屋台。
中世風の街並みに、中世風の衣服をまとった人々。
雑踏、溢れる活気。
まち。
マチ。
しかも、町は町でも―――城下町。
大きな王城を取り囲むように、いくつもの区画にも渡って街並みが広がる。
―――まさか、アジトから山をいくつも越えたところに、このような景色が広がっているとは思わなかった。
「ソウジ、王都を見るのは初めてか?」
「ああ、うん。ニールのアニキは来たことあるのか?」
「何度もな」
「なるほど。って、そりゃそうか、アニキ達はたくさん遠征に行ってるもんな」
俺の言葉に頷いたニールの隣で、恰幅の良いモッチが胸を反らしてクンクンと鼻をヒクつかせた。
「ん~」
「ソウジ、屋台の飯が美味そうだからって、油断すんじゃねぇぞ。ちょっとした隙でサイフをスられるからな」
「ニールのアニキ、そりゃモッチに言った方がいいと思うよ」
俺は、早速その辺の屋台で串焼きを購入しようとしているモッチの方を指さした。
彼のパツンパツンの腰元のポケットから、スってくださいと言わんばかりにサイフが顔を出している。
「―――あっ、モッチの野郎! 言ったそばから―――!」
ニールのアニキはモッチの方へ行ってしまった。
「エレンは大丈夫か?」
「……えっ。う、うん………」
「?」
エレンは、俺達のと同じローブを身に着けているが、なぜか今、そのフードを深く被り直していた。
様子がおかしいエレンは気になるが、何が起きてもいいようにさりげなく周囲へ目を光らせつつ。
「ドラのアニキは、ここは?」
「……さすらっていた頃に、この王都へは俺も何度か立ち寄っていた」
「そうなんだ」
ふぅん、なんて落ち着いていられるのも、俺とエレン以外は王都へ来るのが初めてではないと分かったからだ。
いやぁ、頼もしいパーティーメンバーですこと。
「……それと、ソウジ」
「ん?」
ドラが俺の側に歩いて来て、少し屈んで口元を近づけて来た。
「(ニールも言い忘れていたようだから、俺から言っておくが―――)」
彼は、鋭い目元をさらに鋭くしながら、声を潜めて言う。
「(お前が異世界出身だってことは、外の連中には言わないでおけ)」
「(……ああ、分かってる)」
外の連中、とは、傭兵団外の連中のこと。つまり、一歩でもアジトの外に出れば、俺はただの子供、傭兵見習いとして動け、ということ。
「(特に、王城にいる、あの……女王陛下と姫殿下は、魔力を視ることができると聞いている)」
「(『魔力を視る』……!?)」
「(そうだ。アルはともかく、お前は何かと因縁をつけられる可能性もある。知らぬ存ぜぬを貫き通せ)」
「(分かった。ありがとうドラのアニキ)」
「(礼はいい。俺はただ、今回の遠征がさっさと平和的に終わってほしいだけだからな)」
とりあえずドラに重要な忠告を頂いたので、それを頭の隅にしっかりと記憶しておくとしよう。




