待つ
「びええええぇぇぇぇ! ぇぇぇええええええぇぇぇ!!」
「はっ!? はっ!?」
「ソウジはウチのこと捨てちゃうんだぁ! びえぇぇぇええ!!」
「え!? ちょ、どうしてそうなる!? とにかく落ち着けエレンっ―――!」
目の前でびえぇと大泣きするエレンを宥めることしばらく。
「ぐすっ………」
「悪かったよエレン。唐突過ぎたかもな」
「ひくっ………もう、置いてく、とか、言わない……?」
「言わない言わない。ってか、そもそも誰も置いて行くなんてことは―――」
「でもアジト出て行くってそういうことじゃん!」
「ん……まぁ、確かに」
「じゃあ、やっぱりぃ……ぃ……!」
「わあっ、待て待て、泣くな! 落ち着け―――!」
………どうにも、俺がアジトを離れることについては、協力を得られそうにない相手だと分かった。
「………ウチも出て行く」
「はっ!?」
おまけに。
エレンは―――自分も一緒に行く、とまで言い出した。
まさかまさかの意外な提案。
「いや、だとしてもお前はこのアジトに居場所があるだr―――」
「やっぱりソウジはウチを捨てて行くつもりなんだぁっ………!」
「わぁ、わあっ! 泣くんじゃないぞ、泣くな―――!」
もう何度目か。何か下手を言ってはエレンが再びべそをかく、そんなことを繰り返す。
堂々巡り。一向に進まない話。
どうやらエレンはこの手の話をするのに向かないな。
俺が俺だけの保身を考える場合、エレンは………いつの間にか、アジトより俺という存在を取るようになってしまっている。
これは、果たしてどのように判断し、評価すれば良い事柄なのだろうか。
言うまでもないが、俺にはこの傭兵団―――いずれ古巣となるであろうここの皆と、敵対する意図はない。
いずれ巣立つにしろ―――せめて最後は、円満に離れたい。
「………ぐすっ………」
「悪かったよエレン。突然、変な話をして悪かった」
これから俺は一体―――。
「そもそもオヤジがソウジのこと、どうこうするって、決まったわけじゃないじゃん………」
「………………まぁ、確かに」
言われてみれば、そうか。
まだ、結論を急ぐには早かった。
「んー………」
「………何よ」
エレンを見ていると、泣き顔を見られたくないのか顔を逸らしたエレンが口を尖らせる。
………俺も、少しテンパって、視野が狭まっていたな。
大泣きしているコイツの方が、まだ冷静だった、と。そういうことだろうか。
「………ありがとうな」
「!?」
礼を言うとものすごいスピードで振り向いたので、今度はこちらが口を尖らせ、口笛など吹いて誤魔化す。
「ソウジ、あれっ!? 照れてる!?」
「照れてねぇよ」
視界の端にプラチナブロンドの髪がちらちらして、照れくさいやら鬱陶しいやら、何だか………そう、懐かしい。懐かしい感情を思い出していた。
「うわっ、初めて見た! ソウジが照れてるトコ♪」
「照れてないってば」




