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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
ライフ・ライク・ローグ

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星占い爺さん?

「お前さん、異世界の、()じゃろう?」

「……!!」

 バレた。

 しかも、こんなあっさり………。

 えっ。

 俺、そんな異世界人だって分かるような、分かりやすいヤツだっただろうか?

 確かに当初、ヘンなヤツ&ヘンな格好だと言われたりはしたが………。

 今では格好も振る舞いも、言葉遣いだって………。

 あれっ。

 そもそも俺の言葉が、異世界の住人と思しき、ここの人達に通じているのはなぜだ……?

 そうだ、俺は異世界の出だ、この世界の言葉なんて知りようがないのに。

 助けてください。今、何か不思議なことが起きています。誰か、男のひとぉーっ!

 俺は混乱していた!

「お前さんには、途方もなく大きな星………長く、複雑な、時空のうねりが見えるのぉ………」

「えぇ………」

 そんなことを言われても困ってしまう。

 何だろう、言いたいことがいまいち分からない。

 まさか適当ぶっこいて色々言うから、変なことばかり言う爺さんだから、オヤジも彼を隠しているとか………そういうわけじゃあるまいな。

 彼の言っていることを真に受けるなら………それが星占い(?)的なものだとは分かるのだが。

 星座や暦を占いに使用することがあるのは知っているが、人を間近で―――その、開いているとも知れない目、なっがい白眉に隠れた目で―――見たくらいで、そんな御大層な背景が分かるものだろうか。

「………」

 ……いや、分かるかもしれないんだよなぁ。

 ここ、ファンタジー世界だし。

 竜とか………あとは、魔法(?)も、存在する世界のようだし………。

 占いに関しても、何やらタネも仕掛けもあるような、制度の高い未来予測ができたりするものだろうか。

(わし)が若ければ同行したんじゃがのう……どうやらお前さんの旅に儂はお呼びでないようじゃ」

「旅……?」

 何だろう、なぜかこの爺さんの脳内では俺が旅に出ているようだが………やめてほしい。勝手に俺を旅立たせないでほしい。まだもう少し、俺はこの洞窟住みの野盗の皆さんにお世話になるつもりなんだから。

 だって異世界っぽいところで、急に野に放り出されたりなんかしたら………ヤバいだろ。

 平和ボケした国にのほほんと住んでいただけの、俺みたいな人間なんて、野盗(チンピラ)か熊にでも襲われてイチコロに決まっているのだ。いや訓練を受けた軍人ですら熊相手には厳しいか……。

 ともかく、俺は突然に厳しい環境に急に放り出されたりなんかしたら、今のままではやっていけないことは分かっていた。あらゆる状況に対応すべく身につけたスキルも、どこまで信が置けるか検証中でもあるし。

 ………現に、俺は野盗の一味の下で働いている(お世話になっている)し! 最も力のない、下っ端扱いだし!

「俺はそんな大そうなもんじゃないと思いますよ……」

 すっかり現実に打ちのめされた元・社会人としては、心の底から出た言葉だった。

 そんな俺が異世界に来て(マンガみたいに神に引き合わされてチートをもらうなんてことがあるはずもなく)、命があるだけ奇跡なのだと、今さらながらつくづく実感してしまった。

「ほ、ほ、ほ………確かに………今は力を、蓄えておれ………(きた)るべき………時の…ために………………」

 そう言いながら、爺さんはその長い白眉を動かした。どうやら目を閉じてしまったらしい。

「……えっ、死んだ?」

 いや死んでいない。ただ眠っているだけだ。

「ふわっとしていて要領を得ない………」

 もっと仔細を確認したくなる会話ではあるが、俺と話している最中にこの爺さんが死んでしまったらどうしよう、などと失礼なことを考える。

「………まさか、な」

 少しその場で動かず考えを巡らせても、今の話の真相は確認しようがない。

 一つ確かなのは、彼が、俺を見て一発で、異世界人であることを看破した、ということだけだ。

「………オヤジは俺の出自を知っている風じゃなかった」

 俺が異世界出身であるとか、その辺はあのオヤジですら、知っている素振りはなかったのに。

 あんな実力者でも見抜けない俺の出自が、このような枯れ木同然のご老体に見破られた。

「すげぇな異世界………」

 実に今さらなことかもしれないが。

 日常的な神秘にすら、もはや慣れてきた俺も、ここにきて異世界というものに思わず感嘆するのだった。

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