秘密の部屋
俺がこの世界に来てこの傭兵団に拾われた当初―――今から約二年前―――一日の仕事に追われていた頃が、もう懐かしくなり始めていた。
当初は小学校低~中学年みたいな体格だったが、今や小学校高学年くらいにはなっている……かと思う。
一度は通った道とはいえ、かつての俺とは筋力も脳みそも何もかもが違うので、断言はできないし細かな成長も測定はできないが。
「………ふぅ。なんか、目が冴えちまった……」
当初、この傭兵団に拾われた当初はやることがいっぱいで、夜などはそれはもうグッスリ眠っていたのだが………最近はなまじ生活に余裕が出てきたばかりに、体力を持て余していた。
魔法などで魔力を使えば、何となく精神力(?)のようなものが微減する感覚はあるものの、それだけ。
俺としては強い生物に生まれ変わったみたいで、それはそれで嬉しいものの、かつての肉体との違いや住環境の違いを改めて意識すれば、妙に寝つきが悪くなる時も訪れるようになっていた。
この得体のしれない感覚は何だろうな。不快感や恐怖、焦燥ともつかないが………本当に分からない。
「気分転換に散歩と狩猟でも………ん?」
寝床から脱け出してぶらぶらしていると、アジト内の奥の方にある一角の一室の前まで来る。
今さら道に迷うわけではないが……余り馴染みのない区画だし、ひと一人もすれ違えないくらいの狭い通路を通った先にあった。
「こんな部屋あったっけか……?」
洞窟内は広く、かつて別の種族が住んでいたとかいなかったとか曰く付きであるようだが、それにしたって、傭兵団に拾われて二年以上になる俺でも知らない部屋があったとは。
背後を見遣ると、余りに馴染みが無さ過ぎる景色で驚く。
ただの狭い通路だが、それが見知った区画まで繋がっている………。
頭の中にあるアジトの地図と微妙に一致しない。というか、その地図の一点からこの場所まで、細い通路の分だけ飛び出た区画が脳内の地図に追加された。明らかな新エリアの発見のようだ。
「………」
古びた木製の扉の端にはガタガタの蝶番、そしてちょうど俺から見て目線の辺りには、ドアノブと思しき金属の輪が付いている。
扉からは微かに明かりが漏れていて、部屋の中から人の気配もする。
この辺には倉庫部屋もないし、誰も用がないから近づかない。洞窟内でもこんな奥にまで来ている人間もいないだろう。
「………」
好奇心が勝った俺は、ドアノブに手をかける。
まるで隠されるように存在する秘密の部屋。俺はたった今、それを発見してしまったのだ。
「そーっと……」
部屋の中に入った俺が見たのは―――まず、部屋の中央に置かれた、どこか厳かな装飾の施された寝台。
「ほっほっほ………ついに、来たのぉ」
「! ど、ども……」
そして、そんな寝台に寝かされた老人。
豊かな白い髭をたくわえた、ミイラのような爺さんだった。




