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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
ライフ・ライク・ローグ

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カミングアウト

「気持ちは分かるけどさぁ」

 とりあえず動揺を抑えるように俺は言葉を紡ぐ。

「俺はホモじゃないんだよ」

 これは譲れない部分だ。俺は普通に女性が好きだからこそ。

「だから悪いけど好意は受け取れない。今まで通りに友人として―――」

 濡れた身体をよく拭きもせぬうちに、やや説教臭く同年代に言う俺。

 一方、俺に押し倒されるような格好で、地面に組み伏せられたまま顔を真っ赤にする人物は(たま)ったものではないだろう。

「~~~~っ!」

 しかし、俺に説教臭く言われた同年代―――顔を真っ赤にしたおかっぱ頭の、男にしたってやや顔立ちが綺麗過ぎる美少年―――は、我慢ならないといった様子で俺を睨みつける。

 お? なんだその目は。

 一緒に水浴びすることを拒んだくせに、俺が水浴びしてりゃコソコソ覗いていたやつが、なぜ―――

「―――ソウジっ!」

「ひゃいっ!?」

 突然ブチ切れられたので、驚いて変な声を出してしまう。

 あらやだ怖い……。

「ウチは………ウチは………!」

 アルは溜めて溜めて、そして衝撃の内容を口にする。

「ウチは、女だーーーーっ!!!!」

「うぎょえぇぇーーーーっ!?!?」

 そして俺は、とても驚き慣れていない者が発するような、南国の鳥の断末魔みたいな驚きの声を発するのだった。



 俺の水浴びを覗いていた不審な者を取り押さえてから一転、その人物の大声と、何より衝撃的なカミングアウトでひっくり返った全裸の男(俺)。

 なんとも「終わってる」絵面の後、目の前からすすり泣く声が聞こえてきたことで、俺は慌てて起き上がり、姿勢を正す。

「いまっ……までっ………言えなぐ、でぇっ……!」

「お、おぉ………落ち着け………よし、よしよし、ほら、落ち着いて………」

 俺としても普通に動揺。しどろもどろになりながら、突然泣き始めてしまったアルに声をかけ、その背中を撫でてやる。

 水浴びしていたところから全力疾走してきたわけなので、当然俺だけ素っ裸。だから近くにあったデカい葉っぱで股間だけを隠し、泣く子をあやすような作業に従事しているわけだ。

 なんだこの絵面。マジ終わってんな。

 でも、どうしよう。

 おろおろ、おろおろ………。

「アル、女の子だったんだな」

「う゛ん゛………」

「そうか」

 とりあえず、彼が―――()()が、泣き止むのを待ってから。

「わざわざ打ち明けてくれてありがとう。今まで気づかなくてごめんな?」

「う゛ん゛っ………」

 ぐすっ、と鼻をすすって涙を拭き、恐る恐る俺を見上げるアルきゅん……アル()()()

 俺としてはまだまだ戸惑いも大きい。おおよそ「そうではないか」と察せられる要素をあえて無視していたにしろ、このタイミングでのカミングアウトは流石に予想外だったためだ。

 というか、アルが女の子だったということは………。

 その、さっきの………彼女が、俺の水浴びを覗いていたということには、ある種の事実を示している気がする。

「アル。今回は相手が俺だったから良かったけど、迂闊に男の人のことをつけ回すんじゃないぞ。女の子なんだから、何されるか分からないんだぞ」

「う゛っ……!? う…ん………………」

「よしっ」

 ニカッ、と笑いかけてやり、俺はアルに手を差し伸べた。

 目元も頬も真っ赤な、可愛らしい泣き顔が俺を見上げる。

「立てるか?」

「うん………」

 すっかりショゲてしまったアルの手を引いて、俺は来た方向へと戻る。

 着替え、取って来ないとな………。

 そういえばずっと素っ裸だった俺である。

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