魔法も上達したい
さて、弓矢は上達し、剣も習い始めた。
後は魔法……だが、これを戦闘用として充分に使いこなせるまでになりたい、というのが当面の目標だ。
殺したくはないが、それ以上に殺されたくない。
元の世界に帰るため―――と言って、何が何でも帰りたいというよりは、ホームシックに近い感情だ。
俺は自身を育ててくれた養親の顔をもう一度見たい。安心させてやりたい。
何より、俺がこの世界に転移(?)する直前に遭遇した不思議イベント、それによる影響が気がかりで仕方ない。
空に浮かんだ巨大な魔方陣。その中央にぽっかりと開いた黒い穴。そこから地表に降り注いだ、黒い魔物―――信じられないほど多くの、魔獣。
「………」
おじさんおばさんは―――俺の養親は、無事だろうか。
前方にかざす手に、知れず、力が入る。
目の前に放たれた火炎が、地面に刺した木の棒をゴオッと燃やした。
「ソウジ、あんた………」
ドン引きした声に振り向く。そこには、おばちゃ―――マダムがいた。
我らが傭兵団のボスであるオヤジの、おそらく細君と思われる女性だ。
「どうしたんだい、こんなに燃やして」
「………魔法を練習したくて」
「魔法を?」
ぐるりと辺りを見回すマダム。焼け焦げた地面、木々。明らかに炎の魔法を行使したと分かる光景なのに火事になっていない理由は、焦げた地面や木々が濡れていることからも察してもらえるだろう。
「燃やして消火するのを繰り返せば、火と水、両方の魔法の練習になりますから」
「急いでいるのかい?」
「……どうでしょうね」
この傭兵団に拾われた当初はここでのルールに雑用に、覚えることもやることも多かった。
しかしそれらに慣れた今、過去を思い出す余裕も出てきたことで、却って焦りが生まれているのだと思う。
「しょうがないねぇ。あの人には言っておくよ。折を見てアンタからも頼みなさいね」
「ありがとうございます!」
………何だか、ぼうっとしていたら話がいつの間にか都合の良い方向へ転んでいたが………オヤジ直々に魔法を教えてもらえるのだとしたら、さらに俺も強くなれるかもしれない。
この辺の人間は世界間の転移についてロクな情報を持っていないどころか「何それ美味しいの?」みたいな反応が返ってきかねない。だからいずれは巣立ちを目指すとしても、充分にここで学べることを学んでからでも良いだろう。
まだ幼いこの身体がどこまで成長した辺りでそれらを切り上げるかについても、考えていかないとな。




