どうやら俺は”適応“しつつあるらしい
遠征から戻り、はや数日。
どうやら最近、周囲の森なんかでも目撃例・狩猟例が相次いでいる黒い魔獣が問題になり始めた。
黒いもやもや(可視化するほどの魔力)を纏う、黒い毛並みの、顎がかなり発達したサーベルタイガーみたいな魔獣。見た目のほとんど同じ個体が、そこかしこに出現し始めたようだ。
何それ怖い。
あれはそもそも見た目からして、普段、俺達傭兵団の面々が「獲物」として狩っているデカイノシシとはわけが違うのだ。
戦闘らしい戦闘になるまで鳴かず吠えず、気配を消してギリギリまでこちらに忍び寄って来る。
そんな根っからの「ハンター」な習性だけでも危険なのに、いざ戦闘となればここぞという場面で吠えるあの声だ。
どうやらあの声には、周囲の生物の動きを一瞬だけ止めてしまう、摩訶不思議な力があるようで。
一種の精神作用系の魔法ではないかとは、我らが傭兵団のカシラであり、団内最強のオヤジの推測だが………おそらく、そういった類のものであると注意してかかった方がいいだろう。手練れの剣士ですら容易に拘束してしまうアレは危険以外の何物でもない。
今のところ死者は出ていないが、俺達が日々の食料を得るために、いちいち食うか食われるかの「命懸け」の戦闘をしていたのでは、命がいくつあっても足りないということで、いずれ来るべき日に掃討作戦を実施することになった。まだ時期は未定らしいが、狩り尽くすのは確定らしい。頼もしいね。
………ところで、最初はデカイノシシにすら「命懸け」だった俺からすれば、その「命懸け」の対象がイノシシから黒魔獣に変わっているのは、進歩と言って良いのかどうか。
何だか、この世界に順調に染まってしまっている気がして、我ながら人間というものの適応力には驚いてしまうな。




