黒魔獣
森に入って三十分と経過しない内、だろうか。
ガササッ ガサガサッ
「「「「!」」」」
俺達は全員が武器を抜き放ち、近くの茂みを凝視した。
そこに何か、いる。
「魔獣か……?」
モッチがそう見当をつけた。
しかし、魔獣であるなら、この状況で潜伏し続けるだろうか。
そもそも獲物にバレるまで息を潜めるものだし、獲物に見つかる時は、つまり魔獣が獲物目がけて走り出した時だろう。
「小動物じゃないのか?」
アルは別の予想。偶然通りかかった小動物が、茂みを揺らしたのではと言う。
「……小動物にしては大きそうだけどな」
「ああ」
俺が口にした意見に、ニールニキは賛同した。
何にせよ、茂みの中に何かがいて、ソイツは今も、俺達を観察している。
「………こりゃ、俺の勘なんだが。アイツは、何か違う気がするな」
「「「……」」」
ここにきて俺達の抱いていた印象は共通となり、皆がニールニキの言葉に頷いた。
もちろん警戒は解かない。
「おーい、人かー?」
「敵意がないなら出て来い! それとも―――こちらを狙っているのなら、こちらから先制させてもらう!!」
モッチの呼びかけ、ニールニキの威圧的な宣告。
茂みに動きはなく―――しかし、嫌な、じっとりとした視線が俺達に向けられたまま。
「……アル。矢を放て」
「は、はい!」
ここにきてニールニキはそう言った。いや、自慢じゃないが、弓矢と言えば俺な気がする。今、俺はもう矢をほとんど外さなくなっているし―――。
「アニキ。弓なら俺が―――」
「ソウジは構えてろ。飛び出して来たらしとめろ。しとめそこなえば俺とモッチが応戦する」
「………了解」
そういうことか。
俺は攻撃役。アルは陽動だ。攻撃兼防御がニールニキとモッチ。
「……! 来るぞッ!」
「「「――ッ!」」」
ガサガサと茂みが動き、そこから現れたのは―――。
「―――なッ!?!?」
―――俺にとって、見覚えのあるモノ。
黒い、デカい、魔獣のような何かだった。




