対人戦
俺達を囲む野盗達の輪が縮小し、歪む。
陣形は完全な包囲。強行突破しかない。
アニキ達は輪の一点から逃げ道を作るよう、迫ってきた野盗と切り結ぶ。
「ソウジっ、おめぇは逃げて隠れっ――!? クッ!」
迫る刃を剣で受け止め、ニールニキは鍔迫り合いに入った。
他の面々も似たような感じだ。
「チッ……!」
唯一、俺(の肉体)と同年代のアル少年だけが、じりじりと後退しつつ、剣の柄に手を添えている。
……俺達二人の視線の先で、むくつけきお兄さん達が革ジャンで口元をスカーフで隠した野盗どもとやり合っている。
「………」
人数差はほぼ同数だが……いや、厳密には向こうが一人少ないか。五対四。
しかし、人数有利などと言っていられない。
俺とアル君は明らかな子供。体格が二回り以上も劣る。
あの革ジャン野盗どもの実力がニールニキ達と同等かそれ以上という最悪の想定をするなら、やつらの刃は俺とアル君に届くだろう。
「ソウジッ!? しまったっ、抜けたっ―――!」
モッチが大声を出す。
そりゃあ一人で二人相手に長く立ち回れないだろう。
当然のように、俺達子供二人の担当者がこちらにお越しだ。
子供二人を、大の大人一人が狩りに来た。
「―――」
―――ところが。
ソイツを視認した時、俺の頭の中で、時間の感覚は間延びし……何というか、こう、思考がギュッ、と圧縮する感覚に遭った。
『――バカが! ガキどもがお留守だ!』
アニキ達は俺とアル君から離れたところで戦ってくれていた。そんな彼らの防御を、まるで当然のように野盗の一人が突破し、俺とアル君の方に迫って来る。
局所的な戦況を分析すれば、仮にもこちらは二人で、向こうは一人。なのに向こうがこちらに突進してくる足を止めないのは、俺もアル君も体格的にはまだ子供で、幼年組だから殺すなり人質にとるなりできると思っているから。そんなところか。
「ソウジ、やるぞ!」
「――ああ」
アル君が頼もしい声を上げたので、俺も自分を奮い立たせながら応える。
だが、ちらりと横目で彼の方を見ると、その手はどうにも震えているようだった。
「―――」
マジかよ、なんて思いながら、頭が冷えていくのが分かる。
不思議な感覚。
俺だって怖い。それこそ平和な国で今まで生きて来た、普通のサラリーマンでしかなかった。
そんな俺だ、心身共にまだ子供のアル君とそう変わらない程度の恐怖心や戸惑いを抱いている自信はあるが………同時に、頭がひどく冷静に状況を分析しているのが、自分でも不思議だった。
ここまで数秒の出来事。
しかし、この手は着実に、俺の考えを実行に移している。
「――!? ソウジ、お前、何を―――」
アル君の声が背中から聞こえた。俺は一歩を踏み出していた。
脳裏に、どこの誰とも知れない少女の、千切れた片腕のイメージがちらついている。
―――そして。
よく知る少女の、肉片が、あの凄惨な光景までもが、その千切れた片腕の背景にちらついた。
何だ、このイメージは、なんて思う間に、俺は―――。




