廃村(2)
「……話が違うじゃねぇか」
広場のようなところに浅く穴を掘って埋葬を終えた俺が「ふぅ」なんて額を拭っていたら、いつの間にか、周囲をアニキ達に囲まれていた。
さらにアニキ達から距離を置いて、その周囲を、変な人達にも囲まれていた。
小さな輪を、大きな輪が囲んでいる位置関係。
『………』
見れば、革製と思しきベストに身を包んだ、小太刀くらいのサイズの大型ナイフを構えた、ならず者のような風体の人達。
………いや、俺達の格好と似通っているけどな?
だが、放つ気配はかなり違う。
彼らの持つナイフの切っ先はこちらに向き、ちらちらと威嚇するかのように、その刃が頭上の太陽の光を反射している。
『…………』
ジリ、とこちらを囲む輪を維持しながら、回転するように移動して、まるでこちらが注意を欠く隙を伺っているかのようではないか。
「隠れてやがったのか」
若干の戸惑いはあるが、それでも俺にはすぐに状況が分かった。ニールニキの言葉で疑念が確信に変わる。
「迂闊だったなぁ。風向きが変わったんで。さっきまで俺達のいるところが風下だと思ってたが」
村に入る前を思い出してモッチがそう愚痴った。確かに。
俺達がいるのは廃村の入り口あたりだから、それにしては敵の反応が早いと思うけれども。
というか向こうは、こちらの姿を捉えただけで問答もなく包囲&抜刀なのか?
流石異世界だ。
「待ち伏せってことっすか?」
「その通りだソウジ。腹くくれ」
「マジかよ………」
同業者、ってやつだろうか。風体が似ているからと言って、同じ生業とも限らないんだよなぁ。
自慢じゃないが、傭兵団は他の勢力とも上手くやっていたはずだ。少なくとも俺が彼らに拾われてから、どこかの組織と抗争した、というような話は聞いていない。
「いけるか? 相手は手練れの盗賊だ。イノシシとはわけが違うぞ」
ニールニキがこちらを見ることなく、周囲に意識を配ったままこちらを気遣ってくれた。
「……足を引っ張らないように頑張ります」
「ヒュウ」
誰かが吹いた口笛だ。
とはいえ、俺も自分で驚いている。
―――女の子のものと思しき、千切れた片腕。
先程まで見ていた衝撃的な光景が、頭から離れない。
彼女は、果たして人らしい死に方ができたのだろうか。
『……―――』
俺達を囲んでいた野盗の輪が歪み、数人がこちらに駆け出す。
「来るぞ! お前ら、応戦だ!」
「「「「へい!」」」」
ニールニキの号令で、俺達は腰から剣を抜く。
対人戦だ。




