廃村
一言で言えば、村が黒焦げだった。
………黒焦げの、瓦礫ばかりだったのだ。
「ひでぇもんだな」
台詞の割には淡々と、ニールニキが瓦礫の山を足でどけて、下敷きになっていた人間の腕を青空に晒した。
腕は手から肘まで、それで肘関節は少し残っていた。断面では、腐った肉の繊維はカピカピに乾いて、千切れた小さい白いウネウネが―――蛆が、湧いていた。
「女……それもガキの腕だな」
そう言ったニールニキは、それ以上見るのをやめて別の場所へと歩いて行った。
「………」
どうしてだろう。
気持ち悪いのに目が離せない。
吐きたいのに、なぜか俺は無理やりに感情を抑え込んでいる。
前世―――俺は転生ではなく転移だろうから、そう言うのもアレだが―――とにかく、元の世界で、目の前で俺の代わりに犠牲になった少女の顔が浮かぶ。
俺の代わりに車に轢かれ、ミンチになった少女が、その直前に見せていた顔。
恥じらいとか、気恥ずかしさ、とにかく、そんな初々しい感情が見える、生き生きとした表情。
ハルカ。
俺が代わりに黒礫に貫かれ、血まみれになったら、そんな俺の顔を心配そうに、戸惑いながら覗き込んでいた表情。
この世界に来る直前に会った、幼いハルカも。
「………」
「お、おいソウジ!」
後ろからアルの声が聞こえる。
けれども俺は、周りの瓦礫を持ち上げずにはいられなかった。
……たとえ黒焦げだったとしても。
せめて、人らしく―――。




