目的地の廃村は
遠征も三日目となり、今日で目的地の廃村に着く予定だ。
それで、今日ようやく遠征の主目的が明かされる。
なんてことはない、廃村に残った瓦礫の山から、貴重品などの類を見つけ、集めて持ち帰ること。
何だか火事場泥棒のよう、というか実質ソレだがツッコミを入れたら負けだろうか。
ここまで、山道を男五人での行軍に馬車など使えるはずもなく、それなりに魔物との戦闘をこなしての移動だったが―――いざ、目的地に着く前のこと。何だか焦げ臭い匂いが漂ってきたぞという辺りで。
「………ん? 妙だな」
「どうしやしたニールのアニキ」
「―――お前ら、周囲に気を配っておけよ。人を見かけたら教えろ」
「へ、へい!」
ニールニキの後方を歩いていた俺達は互いに目配せをし合い、周囲への警戒度を高める。
一体どうしたのだろうとは思うが、経験上、いわゆる「歴戦の猛者」のこうした振る舞いには、必ず意味がある。
………とはいえ、廃村の近くに来てからこっち、人はおろか魔物の姿も見ていないのだが―――では、何があるのだろうか。
「……ニール。何だか煤のニオイが濃くないか?」
ニールニキに対してモッチが問うた。
「燃やされたばかりだからな」
「そうか……」
単純明快な答えだったが、モッチはそれで納得したようだ。
とはいえ、やや沈みがちな表情……あるいは緊張感を高めた表情、か……?
彼らに比べればまだまだ新米な俺には分かろうはずもないが。
「見ろ。宝石のついた指輪を見つけた」
ふと、いつの間に、どこから見つけて来たのか分からないが、ドラは見つけたばかりだという指輪を掲げていた。
「すごいっすね。じゃあ俺も作業しますか」
「………」
俺も、そして俺と肉体的同年代のアルきゅんも一緒に作業を始める。
ニールニキもモッチも、年長者達が揃って何かを警戒しているようだ。
とはいえ作業が中止になるわけでもない。
ということは、何だか分からないものの、作業が早いに越したことはないだろうということ。
………そして俺は、世界の非情さを知ることとなる。
焼け焦げた木造の住宅らしき残骸をかき分け、何かねぇかな~と探していた矢先のこと。
「………………えっ」
腕だ。
冷たく、冷えて、固まった―――
硬直した、人間の腕が、落ちていた。




