表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
ライフ・ライク・ローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/56

焚火交流

 遠征二日目。

 今日も今日とて目的地には着かない。あと一日と考えれば今日がちょうど折り返しになる。

 残念ながらアジトから持って来たお弁当(干し肉)が底を尽きたので、今日の野営は狩りをしながらだ。

「ソウジ! そっち行ったぞ!」

「応ッ! 任せてくださいよニールのアニキ!」

 俺は獲物を視認するやいなや弓に矢をつがえ、目標を狙いながら構えて引き絞り、当たると確信できたタイミングで手を放す。

 矢はヒュンッと控えめな風切り音を上げながら飛んでいき、目標の頭部を頭蓋骨ごと貫き、刺さった。

 速射貫通。

 ぱたりと地面に倒れたウサギ(?)は、眼球ごと脳天を矢に射抜かれ、()()()のようになっていた。

「ヒュゥ」

 俺の背後で気配を消していたモッチが口笛を吹く。

「もう新入りだからとバカにできないな。ソウジ、めちゃくちゃ狩りが上手くなってないか?」

「そうかな? ありがとう、モッチのアニキ……」

 照れくさくなりながら頭をかく。ニールニキは分かりやすく褒めてくれることはほとんどないから、モッチのように素直に褒めてこられると反応に困ってしまう。

「血抜きは俺がやっとく」

「ありがとうドラのアニキ」

 俺が仕留めたのは一匹のウサギだ。

 各自、一、二匹ずつ獲物を持ち寄り、焚火の側で血抜きだの皮剥ぎをする。工程には数時間とかかることも多いため、野営で狩猟により食事を準備するとなれば、夕方から夜にかけて忙しくなる。

 作業をしながら、もっと干し肉や干し芋なんかを多めに持って来ても良かったななどと話し合う。

 肉を火にあぶる段になると、焚火を五人全員で囲んでの歓談の場だ。

「最初はイノシシに腰抜かしてたらしいのに、今じゃ弓も百発百中か。ソウジもすっかり慣れたみたいだな」

「アニキ達のおかげっすよ」

「ケッ。白々しい………」

 モッチに褒められる俺を見て、舌打ちと共に小声で嫌味を言うアルきゅん。かわいいねぇ。でもこの場では空気悪くなるし気を遣わせるから、後でこっそり俺にだけ言ってほしいもんだ。

「……ソウジ。お前、弓の手入れはしてるんだろうな」

「はい、そこは抜かりなく。道具の手入れを欠かさないってのも、アニキ達の教えですからね」

「ならいいんだ」

「そういえばドラもソウジのことやたら気にかけてるが……まさか自分も面倒見ようってクチか? オヤジも目をかけてるもんなぁ」

「違う。俺はただ………こいつが新入りであれ、オヤジの団にいる以上、足手まといがいると困ると思ったからだ」

「はいはい、そういうことにしとこうかねぇ」

「モッチ。お前は俺にケンカを売っているのか?」

「ちがうちがう!」

 どうやら恰幅の良いモッチと痩せ型のドラだけれども、ケンカともなればドラの方が強いのか、易々と引きさがるモッチ。

 あるいは彼は空気を読む能力が高いのかもしれないけれども。

 俺も、この傭兵団にはもう半年いるが、各人のパーソナリティについては知らないことの方が多いな。

 団員の間でも、ここに来るまでの経歴や生い立ちなんかを互いに尋ねるのはご法度、暗黙の了解。過去を気にすること自体、誰もが忌避していることだけれども、仲良くなった人間とはそういうことも話せるようになるといいなと思った。

「ケッ。なにニヤニヤしてんだ、気持ち悪ぃ」

 温かい気持ちに浸っていると、アルきゅんからありがたい指摘をもらった。

 まぁ、このアルきゅんともそのうち仲良くなれる気はしているので、何も気にならないのだが。

「おっと。アルきゅんゴメンねぇ、ちょっと思い出し笑いしてたんだ」

「そのアルきゅんってのは何だよ!? マジ気持ち悪ぃ! ケンカ売ってんのかテメェは!」

 可愛い反応が少年ぽくて、何だか昔を思い出して懐かしい気持ちになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ