頭部爆散野郎
「オラァ!」
パンッ
『―――』
気合一発。
俺のパンチによって首から上が爆散した魔物が、ライオンを二倍くらいに大きくしたような身体を、どっと横たえる。
頭部を狙ったのだし、瞬時に爆散したわけだから、断末魔の叫びも聞こえない。そんなもの、上げる暇があるはずもない。
横たわった魔物の身体が目の前にある。魔物はもちろん死んでいる。
「ひぇっ………」
この一瞬の攻防(?)の後、一部始終を後方から見ていたうちの誰かが、軽く悲鳴のような声を上げていた。
「もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな………」
随分と他人任せな呟きも聞こえてくる。
勝手なことだ。
俺はただ、「実力を見せてほしい」なんてことを言われたから、素直に見せてやっただけなのに。
「キャーッ! ソウジ、かっこい~っ!!」
「……ありがとう」
歓声を上げるエレン。彼女には決して煽る意図はないのだろうが、どうしても少し身構えつつ応じてしまう俺。
というか本気で今のがカッコイイ倒し方とか思っているのなら、そろそろエレンのセンスも矯正を試みなければならないかと半ば真面目に検討しそうになる。
「どうしたんだよ。みんな早く剥ぎ取り手伝ってよ」
「「「「あ、ああ………」」」」
振り返りつつ仲間を呼ぶ俺が棒立ちであるように、今回俺とエレンの依頼に同行した冒険者パーティー『大鷹の爪』のメンバーも、どこか呆然と佇んでいた。
気持ちは分かるが………それでもこちらとしては、通常運転で依頼を遂行して参りたい。是非とも。
今後とも変わらぬお付き合いを所望したい。
「なるほど………よっく見たら、確かに不気味かもな」
「お、おいグラース!」
ぽつりと呟いた、とてもよく引き締まった身体の青年・グラース。『大鷹の爪』のリーダーである彼を、参謀役の禿頭の男・ノットが止める
「魔力を直接操作してるんだって? どんな冗談だそれは……」
「俺もよく分かってないんだよな。結局、どこまで行っても感覚的なものでさ」
一応、事前にだが簡単に説明をして、俺がこの力を得るに至った経緯は説明してある。それでも半信半疑、どころか、まだほとんど嘘だと決めつける勢いだが。
だって魔力の流れを感じるんだもの。そしてそれに意識が及んだ段階で、それを操作することができたんだもの。
あら、もしかしてあちし、魔法の才能あるのかしら……?
「妙な魔法も使うし、最高にヘンなヤツだぜお前はよ」
「そりゃどーも。けど俺だって、小さい頃はデカイノシシ相手に苦戦してたんだ。これでも結構修行を積んだんだよ。そう見えないかもしれないけどな」
「分かったっての。お前が修行の途中で滅茶苦茶な才能を開花させたってのは」
それは分かっていると言えるのかどうなのか。とにかく俺の奥義を見て苦笑するグラースに、体よく受け答えをしつつ、俺は愛用の剣で軽く獲物の皮に傷をつけ、愛用のナイフを取り出して皮を剥いでいく。
皆もナイフを取り出し、巨大な獅子の魔物の解体作業に入った。
コイツは言うなればデカライオン(たった今命名)で、個体の強さは中々だが、群れないから中級者が小遣い稼ぎに狩ったりすることもある魔物だ。手練れの剣士はこれを複数相手にしても勝つというから、ライオンのくせに弱いライオンと言えるだろう。ただ、そもそもコイツは群れることはないので、剣士が複数相手にして云々というのも眉唾な話ではあるのだが。
「それはそうと、おいコラソウジ! 頭部爆散野郎! お前、頭ごと粉々にしちまったら、牙を取れねぇだろうが!! また別のヤツ探さなきゃなんないぞ!?」
「……あっ。マジでスンマセン」
グラースに怒られた通り、爆散した魔物の頭は、牙もまたバラバラに折れて砕け散っている。血みどろの地面の上に散乱する肉片と骨片。ザクロのジュースに粉々にしたクッキーでもまぶしたかのような爆心地。これでは頭部から素材を剥ぎ取るどころではない。
………いくら弱い魔物だからって、頭を爆散させて殺しても良いことはないな。
今度は時と場合を選ぶとしよう。うん。どうやら、まだまだ上手い戦い方というのは研究の余地があるようだった。




