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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
魔法研究・初級編

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モンスター乱入! 巨大魔獣グリフォンを狩れ!(2)

「来るぞ、エレン! ヒーミル!」

 滞空飛行状態だったグリフォンは、咆哮の後で怯んだこちらの隙を突くように、身体の角度を変えて急降下を始めた。

 ただでさえあの巨体でどうして飛んでいられるのか疑問だったところ、そこから急降下の速度もいきなりどうしてそこまで速いのか分からない。

 空中での一瞬の静止から、一気にトップスピードに入ったように見えた。

 あの速さで突っ込んでくる巨体を(かわ)して影響を受けないようにすることなど、地上に棒立ちの人間には難行でしかないだろう。直撃は免れたとして、衝撃波で吹き飛ばされる可能性も考えられる。

「くっ――!」

 一瞬の判断。

 エレンは【ウォーターカッター】での迎撃を選択した。急降下中の相手なら不規則な動きで避けるのは不可能だと判断したからだろう。

 しかし。

「こ、これもっ!?」

 グリフォンのちょうど身体の真ん中を穿つように伸びた水の線を、グリフォンは空中で身体を傾けることで回避してしまう。

 先程は凪ぐようにして繰り出した【ウォーターカッター】。

 今度は対象一点に狙いを絞った【ウォーターカッター】。

 前者は斬撃のよう、後者は刺突のようという違いはあれど、両方とも躱されたことになる。

 どう考えても普通じゃない。

 見てから躱せるほど【ウォーターカッター】は遅くない。技の出も、高圧の水そのものの到達も、いくら野生動物の反射神経でも難しいはずだ。

 あれくらいの魔物……いや魔獣ともなれば、魔法発動の前兆を感じ取れるということか?

 詠唱により対策を瞬時に切り替える対人戦とはまた違った勝手。

 無詠唱の人間どうしの戦いも、達人同士ならば同様のことをやってのけそうではある。

『―――』

「!?」

 グリフォンは急降下の途中で、エレンに狙いを絞ったようだった。頻繁に魔法で狙いを定めてくる彼女を真っ先に潰すべきだと判断したのだろう。

 巨体ににらまれ、現に急接近されているところで、エレンにわずかな動揺が走った。

「間に合え―――!」

 俺はエレンの周囲に、【土の槍(アースランス)】を行使。

 地面から無数の土の円錐が顔を出し、エレンを取り囲むように要塞を成した。

 以前ダンジョンで行使した【石の槍(ストーン・ランス)】より脆いが、形成がかなり早い。緊急時にはこちらの方が使い勝手が良いな。

『ギュ―――』

 グリフォンは短い声を出し、驚いたように軌道を変え、エレンの頭上を通り過ぎた。

 その際、【土の槍(アースランス)】のいくつかを(かす)めたようで、ボコンと音がして何本かの土の円錐が先端を折られていた。

 グリフォンから見れば、殺そうとしていた敵の周りに突如として出現した無数のトゲだ。あのまま突っ込んでいたら串刺しとは言わずとも、その身体にいくらか傷をつけたのは間違いない。

『ギュアアアア………』

 再び睨み合いとなる。空中で滞空飛行状態となったグリフォンが油断なくこちらを見下ろすように、こちらも向こうから視線をそらさず見上げている。

「ソウジ! ごめんっ、ウチ―――」

「無事だったならいい。それよりエレン、やつから目を離すな」

「う、うん!」

 エレンが動揺から立ち直るのを見届けて、背後を視界に入れるため半身になり、視線だけでちらりと確認。

 背後でヒーミルがバックパックを背負い直していた。

 ベテラン冒険者だが、しかし俺達のように強力な奥の手を持っているわけではないらしく、高威力の魔法を詠唱する素振りなどはないようだ。

 そりゃそうだ、誰もがエレンのように才覚溢れた者ではないし。初心者の時から、いやあるいはベテランとか呼ばれるようになっても、強力な手札が揃っているとは限らない。

 ただ―――。

「ソウジ、エレン! こっちの地面に爆弾を仕掛けた! もう一度こっちまで近づけさせれば、地上に叩き落とせるよ!」

「「……!」」

 背後を見ずに俺とエレンは頷く。

 俺の中に生まれたのは小さな驚き。流石、ベテラン冒険者だ。やることはやっている。

 というか、魔法の発動の兆候を読まれている可能性が出てきた以上、爆弾ならダメージを与えられるかもしれない。

 一か八かだ。

「エレン!」

「うんっ!」

 何を言うでもなく、一声かけるだけでエレンも俺と同じようにバックステップを踏みながら、小さな跳躍を繰り返して後方へ移動した。

「今度はあたしが囮やるよ! あんたらはさがってな!」

 横の一線を維持する俺とエレンの、ちょうど中間地点辺りに立つヒーミル。その前方は爆弾が埋まっている場所のようだ。

「ちょっとは中堅の意地ってやつを見せないとね――!」

 格好良いことを言いながら、ヒーミルがショートブレードを逆手に持った手で矢筒から矢を取り出す。

 この人、本職は弓術師か?

 そのまま彼女は流れるような動作で弓に矢をつがえ、空中のグリフォンに狙いを定めて引き絞った―――!

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