異世界って何だろう
異世界のことについて知るべく、俺はこの野盗の一味の中で行動を起こすことにした………は、いいものの。
「つっても、なぁ………」
決意したはいいものの、手段は選ばれなければならないよな。
異世界ッテ知ッテマスカ? なんて尋ねまくり、異常者の烙印を押されたのでは話にならないからだ。
どこかに文献などあれば自分でこっそり調べられるのだが………生憎と、我らがアジトは山の中にある洞窟で、そこで人間が集団で暮らす中、蔵書といったものはほぼない。
あっても帳簿として使われているボロい冊子だけで、このアジトが外界とやりくりした形跡、またやりくりするための財産について細々と書かれているだけだ。
「………待てよ?」
この傭兵団の面々、識字率はまちまちだ。しかしながら、会計兼大蔵大臣の我らがオヤブンは、腕っぷしがあるだけじゃなく、読み書き・計算もできることになる。
あのボロ帳簿も、オヤブンの持ち物だからな。
「聞いてみるか?」
オヤブンに? 異世界に帰る方法を?
いやいや。
「―――っと」
そんなことばかりをあれこれ考えている内に、いつの間にか自分の足はオヤブンの執務室に向かっており、今はそのやや造りの粗い執務机の前に。
無造作に置かれた帳簿に、見慣れぬ文字や楔形の記号を組み合わせた十進数が―――。
「………ん?」
と、ここで俺は大切なことに気付く。
なんで今まで気づかなかったのだろうと思えるような、ある意味致命的な要素。
「何で俺、この文字………理解るんだ?」
習った覚えのない文字が理解できる。
さながら、元の世界の知識のある部分が、置換でもされたように。
今の俺は、この世界で使われている文字が読める。
言葉を発することができる。言葉を聞けば意味が分かる。
「………これが『ふぁんたじー』ってやつか」
考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだと知った。




