半人前
「珍しいよな、オヤジがそういう見立てを外すなんざ」
「オヤジはあのバカのどこに可能性を感じたんだ?」
「どう見てもまだまだ細い、ただのその辺のガキなんだがな……」
好き勝手に言う狩猟部隊の面々の後ろを俺もついて歩く。
デカいイノシシまるまる一頭を運ぶのは、俺には無理だった。だからそれをニールニキと二人で持って歩いている。
こんなことを毎度やってきた面々だ。そりゃ俺なんぞまだまだ頼りないガキだろうさ。筋骨隆々とした男達に、俺みたいなヒョロガリが敵うわけがない。
イノシシ一頭の狩猟もままならないガキに。
「………おう。あんま気にすんな」
「……?」
イノシシの前足を引っ張っていたニールニキがこちらを見て言った。
気を遣ってくれたのだ。
「オメェはまだヒョロいし狩りじゃひよっ子なんだ。最初にしちゃ上出来なくらいだよ」
「………」
あれ、どうしたことだろう。ニールニキが優しい。
ニールニキだって逞しい身体つきをしているし、俺なんかの気持ちは分かるわけがないと思っていた。まぁ、俺が勝手に思っていただけだけど。しかしどうやら違ったらしい。
「……そう言うアニキは、最初から狩りを上手くやってたんじゃないの?」
「それ聞くかよ………」
はぁ、と溜め息を吐きながらニールニキは頭をかいた。癖毛が水底の草みたいに揺れていた。
「………まぁオレも、最初はお前と似たような感じだった」
「マジかよ!」
「うおっ、テメッ、手ぇ放すんじゃねぇよコラ!」
「あっスミマセン」
俺はイノシシの後ろ脚を持ち直す。
「………オレだけじゃなくて、ここにいるヤツは皆そうだ。誰だって最初は半人前だ。上手くいかねぇとしてもしょうがねぇ。だからな、それを努力で補うんだよ」
「………」
それは俺の意気地なしを責める言葉じゃなかった。
自分の昔を思い出し、語り聞かせることで、ショゲた俺を鼓舞するものだった。
誰だって最初は半人前、か………。
「むしろ経験上、最初から上手くいくヤツの方がアブねぇ。最初に失敗しておかねぇと、一体何が危険かってのを分からないまま上達しちまうからな。要するに、キキカンリイシキと咄嗟の判断力が育たねぇのさ」
「………ッスね」
ニールニキの言葉はありがたい。
思えば俺は、この世界で生き抜く術………基本的なサバイバル能力?ってやつを、まだまだ培うことができていないのだろう。
それこそひよっ子。集団の後ろをついて歩く雛鳥でしかない。
自然界の動物をして、俺は自身を「獲物」だと思わせた。それほどか弱い存在。
「んだこのヤロウ。ちゃんと聞いてんのか。人がせっかくありがたいお話をしてやってんのに」
「ちょっ、アニキは手を放さないでよ、重いって! あと頭を撫でないでくれ、毛根が痛いよ!」
「ドゥアハハハハ!」
「やめねぇし! アンタ悪魔か!」
………思えば俺は、ニールニキにとても優しくしてもらっていたのだと思う。
それに感謝できる余裕ができる頃には、俺もまぁまぁ強くなって―――いたら、いいなぁ……。




