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文化祭

 「転生逆転シンデレラ」は好評だった。

手芸部主導で作った衣装の出来もよく、乾君は本当に綺麗なお姫様に見えた。

勿論、花村さんの王子も美しさに磨きがかかっていた。客席のあちこちらから歓声が上がった。

 

 アンコールが起る中、役者達は再度舞台に上がった。

舞台袖で見ていた私は、乾君の様子が気になっていた、先程までと表情が異なっていた。

多分体調が悪いのだ。しかし、皆に気付かれないように我慢しているのだろう。

私は、舞台から降りてきた彼を捕まえ「先生が呼んでるよ。」と連れ出した。

彼にだけ聞こえる声で「体調悪いんだよね?」と聞く。

乾君は僅かに驚いた表情でこちらを見て頷いた。


 私は出来るだけ近い空き教室を探しに連れて行った。部屋に入った途端に彼はしゃがみ込んだ。

私はいつものように傍に座ることに後ろめたさを感じ、立ち尽くしていた。

しばらくして発作が治まった乾君は「ありがとう、助かったよ。」と言い部屋を出て行った。



 校内は乾君と花村さんの話題で賑わっていた。

『逆転シンデレラ面白かったね。主役の二人がとってもお似合いだった。

乾君だっけ?女子嫌いって噂だったじゃん。でも全然そんな感じじゃなかたね。』

『花村さん王子にしても綺麗だった。乾君も魅入ってなかった?』

私はそんな話を聞いて、自分の心が何か得体の知れない者に支配され、呼吸が出来なくなるのを感じていた。

この気持ちが何なのかよく分からないし、分かりたくも無かった。



 後夜祭の高校生の主張が始まった。私は優奈と座って、見ていた。

ステージに花村さんが上がった!男子の響めきがした。

ライトを浴びる花村さんは、キラキラと耀いていて眩しかった。

「一年花村さん!誰に主張したいですか?」

「同じクラスの乾君です。」

「乾君~いますか?」

皆の視線の先にはクラスの女子に連れられ、無表情に立つ彼の姿があった。


花村さんは、大きな声で言った。

「乾君!好きになっちゃました。君の彼女にしてください!!」

おおおおおお!!!一層響めきが響いた。

乾君は、申し訳なさそうな表情で「ごめんなさい。好きな娘がいます。」と頭を下げた。

えええ~と周りからブーイング。

司会者が「付き合ってるの?」と慌てて聞く。

「いえ、俺の片思いっす。でも彼女以外には考えられないので、ごめんなさい。」ともう一度深々と頭を下げた。


 花村さんの友人達が、彼女を抱きしめた。

花村さんは大粒の涙で頬を濡らしら「友達になってください。」と言った。


 そんな様子を見ながら、私の心を支配する物の正体に気が付いた。

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