He Side
図書室で三木に見つかった時は、最悪だ!終わりだと思った。
こんな図書館でも人が来ないような棚に何故?と思ったら、図書委員だった。
しかも、よりによってクラスメイトだなんて。
やっと溶けこんだクラスだ、下手に気を遣われたら今までの努力は無になる。
必死で彼女に口止めをした、彼女は戸惑いながらも承諾してくれた。
俺は発想の転換で、公認の場所ができたとばかりに体調が悪くなると図書館に逃げ込んだ。
その度に、彼女は俺に寄り添って背中をさすってくれた。
そんな彼女を最初はウザいと思っていた。
図書館に行くうち、俺は幼い頃を思い出した。
昔、母が本を買ってきてくたこと、外で遊べない俺には本が大事な友達だったこと。
成長すると、自分でネット注文するようになった。
どうしても手に入らない本は、体調の良い時に図書館へ探しに行った。
図書館の独特の匂いと、静寂を俺は気に入った。
ここに居るときは時間が停止して感じた。
まるで、この場所に永遠にとどまれるのではないかと錯覚させられた。
俺は夏休みの図書館へ勉強をするために通った。
実際半分は勉強のため、半分は三木に逢いたかったのだ。
あれだけ怖かった発作も、いつの間にか彼女が傍にいるだけで大丈夫だと思えた。
彼女の本にまつわる話を聴くことはとても心地良かった。
彼女は本当に本を大切に扱う、その所作はとても美しかった。
一冊一冊、丁寧にまるで、その本に刻まれた『想い』を感じ取るかのように。
俺が彼女に持ったこの感情はなんだろう。何にせよ、言葉にすることは無い感情だ。
俺は、心に芽生えた『想い』に気付かないふりをした。