9:ルーチンの設定
現実。
それは学校が終わり、私の部屋でアクラシエルと二人、宿題をやっているという現実だ。
ちなみにアクラシエルは私とは同級生……というか同じ時期に天界に召され、天使になっていた。そして隣の上級天使の邸宅に、私と同じように離れを与えられ、住んでいるという設定だ。
学校も一緒に通い、終わればいつも私の部屋で宿題をやる。
これがルーチンの設定だったので、それに従い、宿題をしていたわけだ。
……まあ、私の頭は今後の人生設計でいっぱいだったのだが、宿題はちゃんとやらねばならない。なにせ学校の成績が良ければ、進路希望で書いた『役割』につける可能性が高まるのだから。
しかし、入浴の手伝いの『役割』が希望なのに、薔薇の剪定と肥料、薔薇の病気とその対策について勉強するのは……無駄とは言わないけど、なんか違うような……。
入浴の手伝いに選ばれるなら……。
例えばアロママッサージ!
乙女ゲーのし過ぎで首や肩がガチガチになった時。奮発して私はアロママッサージに通っていた。
リラックスできるし、凝り固まった体が楽になるし、とても気に入っていたのだ。
しばらく通ううちに、どこをどうもみほぐせばいいか理解し、自分で試せる場所は試すようにしていた。精油についてもいろいろ調べ、お気に入りの香りをブレンドしたりしていた。
天界には香油もあるし、もしアロママッサージができたら、入浴の手伝いの『役割』が近づくんじゃない!?
「ねえ、アクラシエル、肩とか首、疲れていない?」
「!? また唐突にどうした!?」
「だってずっと下向いて机を見て勉強ばっかでしょ」
「それはまあ、そうだけど……」
「ほら、私のベッドにいって。横になって」
困惑するアクラシエルを説き伏せ、ベッドに寝かせる。
それから私は30分、アクラシエルの首と肩、背中を、手でもみほぐした。
ジャスミンの香油があったが、服を脱がせる必要があったし、ベッドにタオルを敷く必要もある。だからとりあえず香油は使わず、もみほぐすことに集中した。
「どう、アクラシエル?」
「……すごく気持ち良かった……」
アクラシエルは、頬をピンク色に染めた。
「ねえ、このもみほぐしができたら、大天使の宮殿での、入浴の手伝いの『役割』、ゲットできると思わない?」
私の言葉にアクラシエルは、首を傾げる。
「……アリエルは『神官』希望じゃなかった? 『私は癒しの力が強いから、神官向きよね』って言っていたと思うけど」
「まー、『神官』でもいいけど、『役割』は得意を生かす、が基本でしょう」
「まあ、そうだね」
「この腕なら、入浴前でも後でも大天使の疲れを癒せるよね?」
アクラシエルは「そうだね」と答えた後、寂しそうな顔をする。
「どうしたの、アクラシエル?」
「……てっきり、学校を卒業したら、アリエルと同じ『役割』につけると思っていたから……」
女の子みたいに可愛い顔で、こんな表情をされると……。
「別に『役割』が違っても私達は友達でしょ。友情は永遠だよ」
するとアクラシエルが眉をひそめた。
「……アリエルはただの友達だと思っている?」
え、何? 違うの? あ、もしかして……。
「ごめん。違った。アクラシエルは、大切な親友だよ」
アクラシエルは無言で私を見ている。
友達より親友の方が、親密性があると思ったけど、違う?
「アクラシエル?」
アクラシエルは私を無視してベッドから降りると、ダイニングテーブルの方へ歩き出した。
途中、立ち止まって振り返ると……。
「……アリエル、宿題やってしまおう」
その顔はいつものアクラシエルだったので、ほっとして私もダイニングテーブルに向かった。
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次回更新タイトルは「デート? まあ、そんな感じ」です。
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