71:激レアな状況
「それで、聞いたよ、カナ。ミカエル様の件。学校に来るのよね、ミカエル様が」
私は「そうなの」と頷く。
「月曜に備え、私なりにオシャレしたの。分かる?」
柚乃は私のことを、頭の天辺から足の爪の先の先まで、じっくり見た。
「うん。分かる。まず、すご~く、華やかで甘い香りがする。思わず近寄って肌に鼻を摺り寄せたくなるいい香り。あと、睫毛。まるで睫毛パーマしたみたい。あと髪のその緩いウェーブ。天界って身だしなみに無頓着でしょ。だから美容院に行っても、メニューはカットとシャンプーしかない。当然パーマもない。その中でそのウェーブは、頑張っていると思うな。あとは……よくみると腕も足もツルツル。ムダ毛処理も完璧だね」
私はシャキーンという感じで爪を見せる。
「あ、爪も綺麗に整えたね。マニュキュアもないのに、つやつやしているわ」
柚乃が目を細め、私の爪を見る。
「ファンイベントに行く時だけ、二人してオシャレしたよね?」
柚乃は力強く頷く。
「そうだね。服を買いに行ったり、美容院に行ったり、化粧品買ったり。その時だけはリア充みたいだった」
前世での懐かしい記憶が、よみがえっていた。
不意に柚乃が尋ねる。
「カナはミカエル様推しで、相変わらず不可侵の存在で、自分から近寄るつもりはないわけ?」
私は大きく頷いた。
「学校に来るのは仕方ないと思う。呼んだわけではなく、ミカエル様の方から来ちゃうから」
「まあ、そうだよね。もし近くにいても、自分から会いに行ったり、話しかけたりはないと」
紅茶を飲みながら、柚乃が上目遣いで私を見る。
「近くにいる、って事態がまずないよ。悪役令嬢ポジションの私でも、ミカエル様に会ったことないし。この天界で」
すると柚乃は、不敵な笑みを浮かべる。
「ガブリエルの宮殿とミカエル様の宮殿は、隣合わせってことは知っている?」
「それはもちろん。ここまで飛んできたから。当然気づいているよ」
「で、うちの旦那、つまりはガブリエルとミカエル様は、今、別の建物で、会議をしているのだけど」
私は盛大に紅茶を吹き出し、柚乃は侍女の名を呼ぶ。
侍女は急いでテーブルをふき、私にハンドタオルを渡した。
「ほんと、すみません」と何度もあやまり、私は口元拭う。
侍女がはけてから、私は柚乃に尋ねた。
「ミ、ミカエル様がこの宮殿の建物にいるの!?」
柚乃は頷く。
「普段はガブリエルがミカエル様の宮殿に行くらしいの。でもほら、うちら新婚だから。ミカエル様が気を使って出向いてくれたみたい。それはつまり、ガブリエルの宮殿と言えど、ミカエル様を見かけるなんてレアみたいなのよね」
……。
侍女が新しい紅茶を届けてくれた。
私は今、激レアな状況にいる。
同じ大天使と言えど、自分の宮殿にいることが多いミカエル様が、ガブリエルの宮殿にいる……。
「カナのこと、紹介しようと思えば、できるよ。だってこの後、ミカエル様と一緒に夫婦揃って食事だから」
「……!」
「ミカエル様と食事。あたしはまだこれからもチャンスはあると思う。なにせガブリエルの伴侶だから。でもカナは……」
「……!」
「推しと食事できるなんて、滅多にないことだよね。まあ、『大天使の宮殿への宮仕え』を、ミカエル様の宮殿で担うことができれば、姿を見かけたり、声を聞いたりはできるかもしれない。でも食事を一緒にするのは……なかなか難しいよね?」
「……!」
「もうフラグは折れたわけだし、自由な身。不可侵な存在と崇め奉るのもいいけど、せっかくのチャンスだよ」
「……!」
「それに」
「柚乃!」
「どうした、カナ?」
私はすがるような思いで柚乃に尋ねる。
「ミカエル様は不可侵の存在だって分かっている。そう自分で決めたから。それを破るのは……自分に甘いかな?」
柚乃は優しい笑みを浮かべた。
「そんなことないよ。時には欲望に忠実であれ!だよ。それにカナはフラグを回避するため、とはいえ、みんなをハッピーにしたわけでしょ。マティアスとソフィア。ラファエルとアクラシエル。私とガブリエル。そしてカナだけが独りぼっち。ミカエル様と食事をしたぐらいで、罰は当たらないと思うけど」
「柚乃……」
「その顔は心を決めた顔だね。そしたらさらにオシャレしないと。せっかく推しと食事するのだから!」
こうして。
私は奇跡的に推しであるミカエル様と、食事できる機会を与えられた。
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次回更新タイトルは「ついに推しと対面」です。
【新連載スタート】
★モブなのにフラグ回避・やり直し・イベントがあるなんて、聞いていないのですが……(焦)
https://ncode.syosetu.com/n2246id/
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のんびり・ほんわかがテーマですが。
キュンの要素は盛っています!
イケメンが雪崩のように続々登場中。
それでは明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
引き続きよろしくお願いいたします!














































