7:全裸にして触れるのもOK!
悪魔狩りから戻った天使の服――キトンは穢れている。
だから「神官」はその天使のキトンを脱がし、下着一枚の姿にしていいのだ。穢れているキトンはポイで、新しいキトンを着せるのだが、その前にやることがある。それは、「神官」が癒しの力を使い、天使自身の体を清めるのだ。
私が学校へ向かう道すがら確認した限り、見かける男天使はすべてイケメン、女天使は美女ばかり。つまりモブまで美男美女。
ということは、悪魔狩りを担う騎士である天使も、美男美女揃いということだ。その美男美女である天使の体を清めるために、下着一枚にしていいと。
しかも「神官」が癒しの力を使う際は、相手を跪かせ、その体を抱きしめる必要がある。
そう。下着一枚のイケメンを抱きしめるという逆セクハラが、容認されているのだ。
攻略キャラ以外もイケメンなのだ。
学校を卒業し、「神官」の『役割』を担うだけでも、私はこのゲームの世界に転生できて良かったと思えること、間違いなしだった。
なにせ前世では、彼氏いない歴年齢だったのだから……。
恋人未満みたいな関係までいった男性は……いないわけではない。だが結局交際に至らずで終わり、そうなると私はすぐさま乙女ゲーの新作を買い、現実逃避をしていたわけで……。
ともかく、生の男性の裸体に触れたことも、見たこと(男系家族をのぞく)もない(幼稚園から大学まで女子高育ち)ので、「神官」の『役割』はとても魅力的だった。
そして「神官」以上に魅力的なのは……。
「大天使の宮殿への宮仕え」の『役割』だ。
もちろん、大天使の宮殿での『役割』は多岐に渡る。
なにせ宮殿である。
その広さは、上級天使の邸宅の比ではない。
街一つ分ぐらいの大きさがあり、大天使がたった一人で眠るための寝所に一棟、食堂のために一棟、浴室のために一棟、というスケール感なのである。
もはや部屋という概念は存在していないと言ってもいい。
今日の学校では、宮仕えの『役割』が紹介されたが、その数百を超え、驚いた。
まあ、建物ごとで役割を担うようなものだし、庭園やら池やら建物以外の要素もあるのだから、『役割』がそれだけあっても当然だ。
で、その『役割』の中には、入浴の手伝いという『役割』があった。
入浴の手伝い……それは「神官」以上の行為を、そこら辺の天使以上にイケメンの大天使達にすることが、許されているのである。
つまり、全裸にする、OK!
体を洗って差し上げる、OK!
体に香油を塗る、OK!
全裸にした上に触れることまで許されるなんて……。
もちろん不可侵のミカエル様にはそんなことはしない。
でも他の大天使であれば……。
一度は入浴の手伝いという『役割』を担いたいと、思わずにはいられない。
そう。
私は大好きな乙女ゲーの世界に転生できた。
だがその乙女ゲーは未プレイのゲームだった。
それなのに、大概悲惨なラストしか待たない悪役令嬢ポジションで転生してしまった。小説版でアリエルは、人間として地上へ堕とされていたが、ゲームはどうも小説のストーリーと連動していない。となると、このまま悪役令嬢のポジションで生きていては、大変な目に遭うに違いなかった。
悪魔の群れに堕とされて清い体を弄ばれたり、人間に純潔を奪われたりするような展開が、待っているかもしれない。
だから、決めた。
マティアスとヒロインであるソフィアが結ばれるのは、邪魔しないと。
マティアスとソフィアを邪魔するガブリエルと、結ばれないようにすると。
さらにこれは推しに対する私の想いとして、ミカエル様は不可侵。絶対に近寄らない。
とにかく目立たず、おとなしく、平穏無事に。
前世のモットーはこの世界でも役に立つはずだ。
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次回更新タイトルは「フラグ回避のプラン」です。
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