66:フラグは折れた!
街の散策ではいろいろなお店を見た。
楽器店、花屋、画材屋、日用品店などなどだ。
ソフィアは新たな『役割』を見つけるという使命感を持ち、お店の様子やそこで『役割』を担う天使のことをしっかり観察している。
手をつないだり、お互いに見つめ合ったりと、マティアスとソフィアがイチャイチャするかと思った。でも、そんなことはない。
マティアスはアクラシエルと一緒に話しながらお店を見たり、ソフィアは私と並んで歩いたりもした。つまり、必ずしもマティアスとソフィアがセットで動く、ということがなかったのだ。
おかげで悪役モードになるのは、少なくて済んだと思う。
明日にでも二人が神殿で婚儀を挙げてくれれば、私のフラグは完全に折れる。
神殿の丘の裏の森も散策し、夕ご飯を食べて解散となった。帰り際、私はマティアスに念押しで、明日の神殿行きをリコメンドした。
家路へ向かう飛行中は、アクラシエルのマティアスとソフィア賛歌が止まらない。
「なんだか僕の理想な二人だったな。まさに美男美女でお似合い。それに二人とも性格がすごくいい。マティアスさんは、僕の髪の色が綺麗って言ってくれたし、肌も男とは思えない程素敵だって言ってくれた。それにソフィアさんは僕の声が美しく癒されるって」
美男美女で理想の二人。性格もいい二人。
マティアスとソフィアは、うん。アクラシエルの言う通りだ。お似合いの二人。
本当に……。
二人は周りがうらやむほど素敵なのに、私は……。
いかん、いかん。
目の前にマティアスとソフィアはいないのに、つい悪役モードになりかける。
一旦二人のことを頭から追い出し、帰宅するととっとシャワーを浴び、ベッドに潜りこんだ。
◇
翌日、天空図書館があく時間に合わせ、家を出た。
マティアスが係員の『役割』を休んでいるか確認するためだ。
開館と同時に天使が来るなんて珍しいのだろう。一階のカウンターにいた天使は、驚きながらも対応してくれる。
学校の授業で使ういくつかの本があると伝え、蔵書があるか探してもらうようにしながら、さりげなく尋ねた。
「先日、マティアスという天使の方に、本を探すのを手伝ってもらったのですが、今日はお休みですか」と。
すると……。
「はい。今日と明日は『役割』を休んでいます」
願っていた通りの回答だ!
蔵書の場所を教えてもらうと、一応そこまで行って本を確認し、しばらくパラパラとめくると、図書館を出た。その足で、ホワイト・ベーカリーの二階へ向かう。
鍵もないのでそのままドアを押し、中へ入った。
「ソフィアさん」
呼びかけながら廊下を進む。
応答はない。
「ソフィアさん」
もう一度呼んでいるとリビングについた。
部屋には誰もいない。
間違いなく、神殿に行っている可能性が高かった。
それでも念のためでソフィアの部屋を出ると、神殿へ向かう。
ダッシュで階段をのぼり、扉を確認する。
手で押すが、扉はびくともしない。
もう一度押すが、扉は開かない。
間違いない。今、神殿の扉は閉じられている。
ということは、マティアスとソフィアは神殿に入ったのだ!
最後に私はホワイト・ベーカリーに行き、昼食のためのパンを手に入れることにした。そしてさりげない会話の流れで店員に、二階に住むソフィアについて、尋ねてみる。
「ああ、ソフィアさんですね。今朝、聞いてビックリでしたが、なんでも神殿へ行くと言っていましたよ」
そこでようやく心から安堵する。
折った。
間違いなく、折れた。
悪役令嬢ポジションにつながるフラグを折ることに成功した!!
この喜びを分かち合える相手がいなくて残念だった。
いや、いる。
羊皮紙と羽ペンを手に入れ、ホワイト・ベーカリーのパンが入った紙袋を手に、家へ帰った。
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次回更新タイトルは「お祭り騒ぎ」です。
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