6:楽勝?
こうして頭の中を整理することで、自分がどこに、誰に転生したのかは理解できた。
しかも、しばらく経つと、私にアリエルとしての記憶もよみがえってきた。
記憶……というか、ゲームの設定か。
私は……アリエルはつい最近、天界へ召された天使で、年齢設定は18歳。
で、天界では仕事や通貨の概念がなく、代わりに『役割』につく必要があり、その『役割』について学ぶ学校に、私とアクラシエルは通っている。
『役割』で成立する天界の仕組みは、小説と同様だ。
家に住むためには何かの『役割』を担う。
パンを得るためには、お店でちょっとした『役割』を果たす、例えば次のお客さんのパンを袋にいれることで、パンを得ることができる。
服……キトンを得るためには、お店で品出しというちょっとした『役割』を担うことで、キトンが手に入る。
この『役割』で成立している天界に召された時、私、アリエルは身一つだった。
だが通りすがりの天使に声をかけられ、自分が住む部屋と『役割』を与えられた。
身一つで天界にきて見知らぬ天使から家と『役割』を紹介される――ここまでは小説で読んだ内容と同じだったが、ゲーム版ならでは、というか、アリエルを悪役令嬢のポジションにするための設定がなされている。
天使の中には上級天使と言われる者がいて(つまり貴族みたいな感じ)、その天使は「神官」「大天使の宮殿への宮仕え」の『役割』を担うことができた。で、アリエルが偶然出会ったのは、この上級天使だった。その瞬間、アリエルは上級天使に仲間入りし、つまりは悪役令嬢の立ち位置になった。
そして上級天使はただの天使と違い、豪華な邸宅を持っている。
アリエルは上級天使の邸宅内にある離れ、つまり戸建ての家を丸々一軒を、「部屋」として与えられていた。
つまり、ワンルームと思ったが、あの部屋には一階があったのだ。ちなみにその一階には客間、書斎などの部屋が存在している。私が目覚めたのは二階の部屋だったというわけだ。
この一人で住むには広すぎる離れと共に私へ与えられた『役割』は、上級天使だけが進学を許される学校へ通うことだった。
学校に通うことが『役割』になるとは驚きだ。
しかも『役割』を担う=自分が住む場所が与えられる。
前世では、学校に通うからといって、一戸建てを与えてもらえるなんてあり得ないことだった。だがこのゲームの世界では、学校で学ぶという『役割』を担うことで、住む場所を、しかも家具家電付きで水道光熱費は無料の一戸建てを与えられた。夢みたいだ。
さらに言えば、学ぶ内容は、今日一日学校へ行ってみて分かったのだが……これがゲームの世界であり、本業はイケメンの攻略であるのだから、この程度が妥当なのだと思いつつも。
本当に楽勝と思えた。
いつか「神官」の『役割』を担うため、ということで今日習ったのは、天使の持つ「癒しの力」の使い方と、手早くキトンを脱がせる方法だ。
「神官」は、悪魔狩りから戻った天使から、悪魔の不浄を清める役目を担っている。
ちなみに悪魔狩りというのは、地上にいる悪魔を狩ることだ。
地上には三種類の悪魔がいる。
戦闘で傷を負い地上に落ちた悪魔、人間に害を成すためにあえて地上に向かった悪魔、はぐれ悪魔の三種類だ。
天使と悪魔による戦闘は、古の昔から続き、その戦闘は地上から遥か上空で行われていた。その戦闘の際、傷を負った悪魔が地上に落ちることが多々あった。地上に落ちた悪魔は、傷が癒えれば魔界に戻るが、そのまま地上へ住み着く場合もある。悪魔と言っても翼を背中に隠せば、見た目は人間と同じ。人間のフリをしてそのまま何食わぬ顔で地上にいるわけだ。それでおとなしくしていればいいが、たいがいの悪魔が人間に害をなす。だから悪魔狩りで天使に狩られる。
人間に害を成すためにあえて地上に向かった悪魔は……言うまでもない。天使による悪魔狩りの対象だ。
最後のはぐれ悪魔というのは、様々な理由で魔界から逃げ出した悪魔のことだ。
例えば天界と魔界の長引く戦争にウンザリし、地上へ避難した悪魔。魔界で何かやらかし、身を隠すために地上へ降りた悪魔。なんとなく魔界が嫌で地上に向かった悪魔。その理由は様々だが、地上は悪魔がいるべき場所ではない。ということで、悪魔狩りの対象になっている。
この悪魔狩りの役目は、騎士である天使が受け持っている。
彼らが悪魔狩りを終え、天界に戻った時、武器を預かり、それを清め、天使自身を清めるのが「神官」の役割だ。
その時に使うのが天使の力、すなわち癒しの力。そしてアリエルはアクラシエル同様、癒しの力は強かったので、簡単にこの力を使うことができた。
まさにゲームの設定、万歳である。
しかもまだ実習は体験していないが……乙女ゲーにぴったりの要素があった。
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次回更新タイトルは「全裸にして触れるのもOK!」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
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