3:あなたはどなた?
鏡は、ユニットバスにあった。
そこに映る女性を見て、私は口をあんぐり開ける。
ものすごい美女だった。
痛むのが嫌なのと節約で、一度も染めたことがない黒髪は、輝くようなバターブロンドに変わっている。茶色の瞳は綺麗な碧い瞳に、唇はバラ色で血色の良い肌に変貌していた。
着ている服は……そう、キトンというものだ。
豊かなバスト、くびれたウエスト、引き締まったヒップ。
まるで外国人モデルみたい。
本当にこれが今の自分なのかと口を動かし、目をパチパチし、鏡に映る姿と連動して動くのを確認した。
その時だった。
突然、後ろのドアが開き、私は悲鳴を上げる。
「!? アリエル、どうした!?」
私は声の主を観察する。
腰まである長い髪は、綺麗なストロベリーブロンド、瞳の色は琥珀色で、ほんのりピンク色に染まった白い肌で、私と同じキトンを着ている。
だ、誰……!? どこから現れた!?
部屋には私以外、誰もいなかったはず。
キッチンの前に、このユニットバスのドアがあった。
でもここに入る前、キッチンにも玄関にも誰もいなかったはず。
……もしかして不法侵入?
いや、不法侵入者は私の方!?
もしかしてこの部屋の住人!?
「アリエル、学校へ行く準備はできた?」
アリエル? それが私の名前?
私の名前、雛月カナなんだけど……。
そこで私はあることに気づく。
待って。
アリエル……。
というか自分のこの顔、どこかで見たことがある気がする。
身長は私よりある、目の前の相手のことも、もう一度まじまじと見てみた。
この顔もどこかで見たことがある。
「あの、あなたの名前は?」
「え、アリエル、どうした? まだ寝ぼけている!?」
「私はアリエル。そしてあなたはどなた?」
「……どうしちゃった? 何かのゲーム?」
ゲーム。
ゲームと言えば、乙女ゲー。乙女ゲーと言えば……。
連想ゲームをしている場合ではない。
乙女ゲーと言えば……昨晩プレイしようとした乙女ゲーは『千年片想い』だ。
‼
いた、いました。この顔。
女子みたいな容姿をしているけど、攻略キャラのお一人だ。
「あの、アクラシエルさんですか?」
「……本当にどうしちゃった? アクラシエルさんって。今更、さん付けで呼ぶ?」
アクラシエルは不思議そうに微笑んだ。
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次回更新タイトルは「超親切心からの采配だと思うケド」です。
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