23:攻略キャラと恋愛する時間なんてない
天界役場を出て、街へ向かい歩きながら、私は気持ちを落ち着かせた。
ソフィアが騎士?
それはつまり悪魔狩りに出ているということだ。
どうしてそうなった!?
悪魔狩りなんて、朝早く地上へ向かい、夜は……だいたい18時ぐらいに戻るはずだ。
次の帰還のピークは20時だと、学校の授業で習っている。
だがどの時間に戻ろうと、それで帰還したら家へ直行だろう。
つまり前世の私と同じ。
家と会社の往復、ならぬ、天界と地上の往復。
しかも職業は悪魔狩りという血生臭いもの。
ソフィアは乙女ゲーのヒロインなのに。
こんな生活していたら、攻略キャラと恋愛する時間なんてない。
ないどころか、そもそも誰とも出会えないではないか!!
どうして騎士になった、ソフィアは?
というかソフィアは武器なんて……ああ、使える設定だ。
小説でソフィアは、天使になる前は人間だった。その時には一人でなんでもこなし、薪割りのために斧だって振るっていた。狩りだってやっていたから、天使になっても弓矢だって使えていた……。
でもだからって騎士にならなくても……。
いや、もしかして……。
天界でソフィアと出会い、住む部屋や『役割』を紹介するのはアクラシエルだった。
あくまで小説では、だけど。
でも三日前と言えば……。
そう、確か街に用があると言っていたアクラシエルを説き伏せ、私の部屋で足裏マッサージをやっていた。私が入浴の手伝いという『役割』につくのに、役立ちそうだからと言って……。
つまり、ソフィアは出会うはずのアクラシエルと会うことができなかった。
もしかしてそれでソフィアがおかしい方向へ進んでしまった、とか!?
いずれにせよ軌道修正しないといけない。
というか、誰がソフィアに騎士になるよう勧めたわけ?
普通、あの容姿を見たら、騎士なんて勧めないでしょ。
かといって天界に来たばかりのソフィアが、いくら弓矢を使えるとはいえ、いきなり騎士になりたい、と自分から言いだすはずがない。
まずは道を踏み外させた奴からソフィアをひき離す。そして騎士はやめさせる。その後は……そう、本来のソフィアが小説で担っていた、ホワイト・ベーカリーの店番の『役割』につけないか模索する。
通り沿いに設置された時計に目をやると、もうすぐ16時半という時刻だった。
私は、悪魔狩りから帰還したソフィアに、声をかけるつもりでいた。
18時前にあの広場に行くにしても、時間を潰さないといけないな……。
そうだ。
ホワイト・ベーカリーに行ってみよう。
美味しそうなパンが小説に登場していたから、食べてみたいと思っていた。
私は早速ホワイト・ベーカリーへ向かう。
お店が見えてくる手前から、パンのいい香りが漂っている。
ウキウキしながらお店の中へ入った。
ホワイト・ベーカリーのパンはどれも美味しそうで、何を食べるかとても迷った。
散々迷い、イチジクのマフィンとコーンブレッドを、自分の晩御飯として手に入れることにする。
そこで思いつく。
このあとソフィアに声をかけるきっかけに、パンは使えるかもしれない。
追加で胡桃のパンも、いくつかトレイにのせる。
次のお客さんのパンを袋に詰めるという、ちょっとした『役割』と交換で、パンを手に入れた。
コーンブレッドと胡桃のパンにつけるための、瓶に入った蜂蜜ももらえた。
ついでに店番の『役割』に空きがないかと尋ねると、あいにいく今は間に合っているとのことだった。でもまあ、ソフィアが実際にここに来て、店番の『役割』をやりたいと言えば、ゲームの設定により叶うかもしれない。
楽観的に考えることにして、私はパンの袋を抱え、神殿のふもとに広がる丘へ向かった。
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