22:ヒロイン探し
「アリエル、帰ろう」
授業が終わると、アクラシエルがいつも通り私に声をかけた。
だが、今日の私には予定がある。
ソフィアが出現していないか、街で確認するという予定が。
だから。
「アクラシエル、ごめん。今日は予定があるの。だから一緒に帰れない」
「え!? そうなの?? いつもみたいに宿題をして、その後に昨日の香油でアロママッサージをしてくれないの?」
アクラシエルが悲しそうな顔で私を見る。
「ごめん、アクラシエル。そうしたい気持ちはあるのだけど、今日は無理。明日なら多分、大丈夫かな」
「……そうか。ねえ、予定って?」
「ちょっとね」
「……」
とても寂しそうな顔で、アクラシエルは俯いた。
いつも一緒に帰り、宿題をしているのだ。
突然予定があると言われたら、悲しくなるのは当然だろう。
「ねえ、アクラシエル、聞いて。いつも一緒だから、今日、別行動になるのが悲しいのは分かる。でも前向きに考えてみて。アクラシエルだって、何かやりたいことがない? 私と一緒だとできないこともあるでしょ? 今日はそれをやる日にしてみたら?」
「アリエル……」
アクラシエルはしばし黙り込んでいたが、ハッとした表情になる。
どうやら何か思いついたようだ。
「分かったよ、アリエル。今日は別々で」
私はホッとして、校門の前でアクラシエルと別れた。
◇
学校から一目散で、街へ向かって飛んでいく。
昨日と同じように天界図書館の前に降り立ち、街へ向かうことにした。
だが。
途中で考えが変わった。
天界で、個人情報をどれぐらい厳密に管理しているかは、分からない。でもすぐそばに、天界役場がある。ここでソフィアのことを確認できないだろうか? もし確認できれば、わざわざ街中を歩き回る必要はない。
私は街へ向かいかけていた体をUターンさせ、天界役場へ向かう。
初めての天界役場。
少し緊張しながら、中へ足を踏み入れた。
そこは……。
地上の役場と変わらない雰囲気だった。
私は安心し、案内図を見た。
「今日はどうされましたか?」
美しい女性の天使に声をかけられた。どうやら案内係の『役割』を担っている天使のようだ。
私は案内係の天使に、こう説明した。
最近天界にきたソフィアという女性の天使を探している。困っているところをソフィアに助けてもらったので、御礼を言いに行きたい。でもどこに住んでいるのか分からないので、ここで教えてもらえないかと思いやってきたと。
すると。
「では5番カウンターへ向かってください。そこで確認できます」
できるんだ!
私は言われるまま、5番カウンターに向かう。
カウンターでは、イケメンな男性の天使が対応してくれた。
先ほどの案内係に言ったのと同じことを伝える。
男性の天使は「では確認してみますね」と応じた。
身分証を呈示するとか、必要書類を記入するとか、そんなこともせずに済んだ。
すぐに台帳のようなものを手に持ち、男性の天使が戻ってくる。
「ソフィアさんですよね」
「はい」
男性の天使は、私の目の前で台帳をめくる。
「あ、この方かな?」
「!」
なんてこった!
私が気づいていない間に、ソフィアは天界へ来ていた……!
台帳にソフィアの名が記載された日付を見ると、三日前だ。
「住まいは……ホワイト・ベーカリーの二階ですね」
……! そうか。そうだ。
小説でも、ソフィアはホワイト・ベーカリーの隣の二階に住んでいた。
ソフィアがケーキやパンが好きだったことを考えれば、ホワイト・ベーカリーの近くに住んでいると、想像することができたはずだ。
昨日のうちに確かめておけばよかった……。
何はともあれ、天界にいること、住んでいる場所、それが分かったのだ。
「ありがとうございます! これでソフィアに会えます!!」
個人情報の扱いは緩いが、ここは天界。
性善説が成立する世界。
私はお礼を言うと、カウンターから立ち去ろうとした。
「ちょっとお待ちください」
男性の天使が私を呼び止める。
「ソフィアさんは騎士です。ですからまだこの時間では、戻っていないと思います」
「!?」
私は驚愕し、思わず「えええええ」と大声を出していた。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
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次回更新タイトルは「攻略キャラと恋愛する時間なんてない」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日もよろしくお願いいたします!










































