18:興味をなくす
「お、威勢がいいな。もう元気いっぱい、というところか」
ウリエルは楽しそうに私を見ている。
私は部屋の様子を確かめ、ここが病院だろうと認識する。きっと「天界救急本部」に運ばれたのだと理解する。
ラファエルはエルサに話しかけていた。
私はアクラシエルのベッドに駆け寄る。
「アリエル、大丈夫かい?」
アクラシエルが上半身を起こした。
「うん、平気。さっきは助けてくれてありがとう」
「アリエルの役に立ててよかったよ」
アクラシエルが天使らしい清らかな笑顔になる。
ウリエルは私が休んでいたベッドに腰をおろすと、その長い脚を組んで、アクラシエルと私のことを見た。
「しかし、アリエル、アクラシエル、二人ともたいした癒しの力を持っているな。お前たちが二人がかりで清めた魔力。あれは古の悪魔の呪いだ。今の悪魔より、古の悪魔の方が、魔力が格段に強い。だからあれを清めるには、生半可な癒しの力では無理だ。おれやラファエルのような大天使だったらまだしも、お前たちのような新米の天使では、普通は清められない。神官でさえ、三人がかりで清めるような魔力だ。間違いなくアリエル、アクラシエル、お前たちは癒しの力が強い。学校に通っているのだろう? 二人とも神官の『役割』が向いていると、おれから推薦しておくよ」
「ウリエル様」
アクラシエルが聞いたことがないような力強い声で、ウリエルの名を呼んだ。
ウリエルは片眉をくいっとあげ、アクラシエルを見る。
「大変ありがたい申し出ですが、私もアリエルも『神官』の役割ではなく、『大天使の宮殿への宮仕え』が希望です。ですから、推薦はしていただかなくて結構です」
きっぱりとアクラシエルが言い切ると、ウリエルは「ほう」と言いながら、ベッドから立ち上がった。
「『大天使の宮殿への宮仕え』が希望とはな。で、何の『役割』を担いたい?」
アクラシエルが私を見た。
これはチャンスだ、とアクラシエルの瞳が言っている。
そうか。神官ではなく、大天使の宮殿の『役割』の方で、ウリエルから学校に推薦してもらえばいい、ということね!
私はウリエルを見た。
美しいサファイアブルーの瞳が、私を真っ直ぐに見ている。
思わずクラっとしかけたが、ここが勝負の時だ。
フラグを回避した後、私の乙女ゲーに変わる楽しみは、この世界のイケメンを堪能する。これしかないのだから。
しっかりしろ、私!!
「私はもみほぐしが得意で、香油についても今、勉強しているところです。大天使の皆さんの希望に合わせた香油をブレンドし、入浴後、その香油を使って、疲れた体をもみほぐすこともできます。ですから私の希望は、入浴の手伝いの『役割』です」
ウリエルの口元が一瞬フッと笑みを漏らしたように見えたが、気のせいだったのかもしれない。
なぜならウリエルはこう即答した。
「なるほど。入浴の手伝いか。せっかくの癒しの力を活用しないのは、勿体ないことだ」
それだけ言うと、私とアクラシエルに興味をなくしたようだ。
そのままラファエルのそばに行くと……。
「ラファエル、おれはミカエルに今回の件を報告しに行く。後は頼んだぞ」
ミカエル様!
心臓がドクンと大きな音を立てる。
天界にきて初めて、ミカエル様の名前を聞いた。
「分かったよ。気をつけて。ミカエルによろしく」
「ああ。ではな」
ウリエルはラファエルとの会話を終えると、私達には目もくれず、そのまま部屋を出て行ってしまった。
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次回更新タイトルは「今は、まだ、ダメ」です。
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