15:急に顎クイなんてされたら……
そのまま実習が行われるふもとの広場まで飛んでいく。
広場の入口あたりでアクラシエルは着地した。
「あ~、もう、本当にビックリした。まさか神殿にウリエルがいると思わなかったよ」
「……」
「しかも、アクラシエルと婚儀を挙げるのか、なんて聞いてくるし、ビックリだよね!?」
「……」
「ねえ、アクラシエル?」
アクラシエルの腕に触れようとしたその瞬間。
「アリエル、イケメン耐性ないとか言っていたくせに、『違います』って即答したよね?」
「!?」
「しかも振りほどくように、手を離した……」
「それは……アクラシエル、ごめん」
私はアクラシエルの腕を掴んだ。
「え!?」
アクラシエルの琥珀色の瞳には、涙が浮かんでいる。
「アクラシエル、ど、どうしたの……?」
「ウリエルに顎を掴まれたアリエルは、うっとりした顔でアイツの顔を見ていた。……ウリエルは私から見てもカッコいいし、逞しい体でワイルドだ。その上、女性の心をとろかす甘い言葉を囁く。最初はイケメン耐性がないって言うから、そうかと思ったけど……。さっきのあれ、あの顔は……アリエルはウリエルみたいなのがタイプなのだろう?」
今にも泣きそうな顔で、アクラシエルが私を見た。
「⁉ そんなわけないよ。本当にイケメン耐性がないだけだよ。イケメン耐性だけじゃない。そもそもとして男性に対する耐性がないの。だから急に顎クイなんてされたら……」
突然アクラシエルが私の顎を持ち上げる。
「え、どうしたの、アクラシエル?」
「顎、持ち上げてみたけど」
「え、だから?」
「……」
アクラシエルは私の顎から手を離すと、広場の中を歩き出す。
「ちょっと、待ってアクラシエル」
私は慌ててその後を追いかけた。
◇
「手順は先程説明した通りです。繰り返しになりますが、悪魔狩りから帰還した天使から、神官が武器を受け取ります。その武器を皆さんに渡すので、それを受け取ったらまず状態を確認してください。天使が持ち帰っている武器ですので、通常は武器を格納する小屋まで持っていき、そこで手早く癒しの力で清めればよいでしょう。
稀に武器に強力な魔力が残っている場合がありますが、それは武器を受け取った神官が気づくので、皆さんが手にすることはないでしょう。万が一、強力な魔力が残る武器に触れてしまった場合は、すぐに武器を捨ててくださいね」
教師である上級天使の説明に、実習に参加する生徒たちは一斉に「はい」と返事をした。
「それでは先ほど割り振りしたそれぞれの場所に、移動してください」
そう締めくくると、上級天使の教師は手を叩き、生徒たちに移動を促す。
「ねえ、アクラシエル……」
「……なんだい、アリエル」
ようやくアクラシエルが口を聞いてくれた。
「なんかさっきはごめん」
「どうしてあやまるの、アリエル」
「……私の言動がアクラシエルを悲しませたから?」
「もう、なんで疑問形?」
アクラシエルは盛大にため息をつく。
そう言われると答えようがない。
でもアクラシエルは悲しそうな顔をしていたし、泣きそうだったわけで……。
「……もういいよ、アリエル」
「アクラシエル……」
「今はちゃんと実習に集中しよう」
確かにその通りだ。
神妙な面持ちになった私にアクラシエルは……。
「お互い、頑張ろう」
いつも通りの笑顔を見せた。
私はそこでようやく安堵する。
「あなたがアリエルですね。こちらに来てください」
神官に声をかけられ、私はアクラシエルに手を振った。
アクラシエルも小さく手を振ると、自分が担当するエリアに向かって歩いて行く。
私は神官の一歩後ろに控え、悪魔狩りから帰還する天使を待つことになった。
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次回更新タイトルは「イケメンな騎士の肉体美を見るチャンス!?」です。
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それでは明日もよろしくお願いいたします!










































