12:初めての体験にショート寸前
「アリエル、アリエル、大丈夫か!?」
私は必死に深呼吸を繰り返し、気持ちを静める。
お姫様抱っこ、頬へのキスという初めての体験に、もうショート寸前。
しかも相手は超がつくイケメン。大天使ウリエルだ。
もう目が回って気絶してもおかしくない。
「アリエル、私の声、聞こえている?」
ウリエルは堕天し、悪魔として過ごしていた時期がある。その時、魔界では毎晩違う女悪魔と床を共にしていたという。
それぐらいのプレイボーイなのだ。
ちょっとお姫様抱っこされたぐらいで、頬にキスされたぐらいで、舞い上がってはいけない。
落ち着け、落ち着け。
「アリエル!」
いつにないアクラシエルの力強い呼びかけに、現実に戻る。
「……あ、アクラシエル、助けてくれてありがとう」
「アリエル……」
「ビックリした。大天使のウリエルだよ。まさかこんなところで会うとは思わなかった」
ソフィアがなかなか現れないから、ウリエルは暇を持て余しているのだろうか?
あ、でも役場に向かったから、何か任務があったのかもしれない。
「アリエル、顔が真っ赤だ。……もしかしてウリエルに一目惚れしたとか?」
「……! 何言っているの、アクラシエル! そんなわけないってば」
「じゃあなんでそんなに顔が赤いの?」
それは……。
あんなイケメンに見つめられたら顔も赤くなるでしょうが!
「だって、ウリエルってイケメンだよね? 私にイケメン耐性なんてないから。あんなに綺麗な瞳で見つめられたら……。突然お姫様抱っこなんてされたら、パニックだよね!?」
「……アリエルって、『大天使の宮殿への宮仕え』で、入浴の手伝いの『役割』をしたいって言っていたよね? そんな状態でできるの、その『役割』を。入浴の時、大天使は裸になるって分かっているよね?」
……!
仰る通り。
確かにこれは耐性をつけないとダメだ……、
画面越しに眺めるとのは違う。
しかも『役割』を担っているのだから、その『役割』も果たさなければならないのに。
項垂れる私に、アクラシエルは……。
「仕方ないな。アリエル。君が耐性をつけられるよう、私が協力するから」
「協力……?」
「とりあえず、街へ行こう。夕ご飯も食べるんだろう? ここでもたもたしているのは時間の無駄だよ」
そうだった。
思いがけずヒロインの攻略キャラに遭遇し、動揺してしまった。
ウリエルは私には関係ないキャラだ。ソフィアに手を出すなら全力で止めにかかるが、今はその時ではない。関わる必要がないなら、迂闊に近づかない方がいい。しかも相手は百戦錬磨のプレイボーイ。何よりどこでフラグが立つか分からないのだから。
私はアクラシエルに手をひかれ、街へ向かった。
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次回更新タイトルは「まるで女子と過ごしているみたい」です。
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