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最愛の悪女になるために。  作者: 翡翠 律
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第1話 side ラスティナ



 ここは貴族の子息達が通う聖ヴェリストロ学院。

 晴れ渡る青空の下の学院の屋上で、洗練された校舎に場違いな怒号が響き渡っておりました。


「ふん!よくワタクシの前に姿を現せられましてね、フローリア嬢!!」


「ラスティナ様......。」


 紫色の髪に縦ロール、目尻がキッと上がった女性徒の前で体を震わせてぎゅっと両手を握る金髪の可愛らしい美少女。

 ふるふると子ウサギのように震える彼女にさらに声を荒げた紫髪の女生徒が人差し指を突きつけました。


「まあっ!?ワタクシの名を呼ぶとは!いつからそんな親しくなりまして!?格上の貴人を呼ぶ際は家名でお呼びなさいっ!!失礼でしてよっ!」


「は、はいっ!!」


 びくぅっと縮み上がって目を閉じ泣きそうな顔で答える美少女に、屋上でくつろいでいた生徒達が同情の目をしてこちらをチラチラと伺っている。


「これだから、こ、これ、これだから、マナーがなっていない下級貴、かきゅ、かきゅ、かきゅ......あああああ!噛んでしまいました!」


「ラ...じゃなくて、リリィロル侯爵令嬢様?ど、どうなさったのですか?」


 頭を抱える紫色の髪の女生徒、あああ、もう、これは私です!私なんです!

 その私の挙動不審さに、叱責されていたはずのフローリア・マーゴット子爵令嬢が目を瞬かせて心配そうに見てきています。


 最後のセリフで噛んでしまうなんで、ああ、もう、これは失敗ですね。

 ほら、あちらの影から一部始終を見ていた殿下が、肩まである美しい水色の髪を靡かせながら、その長い足でこちらへツカツカとおいでになっているのが見えます。


 殿下とはこのローゼ国の第一王子、ビオラル・ローゼ殿下のことです。


 ビオラル殿下は私の近くまで来ると、わきに挟んでいた黒と白の板を取り出しました。その板を私に向かって高々とあげ思いきり振り下ろしてきます。


「殿下!いけません!ラスティナ様を叩くなど......!!」


 青ざめたフローリア嬢が殿下と私の間に入ろうととっさに床を蹴ったと同時にビオラル殿下が振り下ろしたその板の上部をカチーンと鳴らしました。



「カーーーーットぉぉ!!」


「「「 は? 」」」


 その場にいる私と殿下以外の者たちが、殿下のいきなりの行動と発言に虚をつかれ唖然としています。


「ラスティナ。これはどう言うことだい?」


 周りの者には目もくれず、その水色の瞳で私だけをじっと見てビオラル殿下が眉間に皺を寄せています。


「ビオラル殿下!違うんです!ラスティナ様は何も......!!私は大丈夫ですからっ。」


 私が殿下に答えようとする前に殿下の前にずずいっと出たフローリア嬢が、私を擁護する言葉を言いながらも最後はポッと顔を赤らめながら殿下を上目遣いで見ております。

 彼女はモジモジと助けてくださってありがとうございます的な視線を殿下に送っていますが、ビオラル殿下はラブラブ光線を送っているそのフローリア嬢を軽やかに避けました。私の至近距離まで近づいた殿下は私の肩を優しくも強く引き寄せ、私の目を見つめながらおっしゃいます。



「ダメじゃないか。きちんと僕の台本通りに(・・・・・・)台詞を言ってくれないと。ちゃんとした悪女になれないよ?」



 そうそう、殿下がお持ちになっていた板の名前は『カチンコ』と言うそうです。


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