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第十五話 墓場まで

さて、ここで俺がどのようなヒーローだったのか一言断っておきたい。

俺はヒーロー1号で、リーダーだった。リーダーと言っても、戦闘の時は、他のヒーローの後方支援に回った。後方支援の担当として一人の死亡者も出さなかったことは、未だに誇りに思っている。もしかしてヒーローについて勘違いしているかもしれないが、勇ましく先駆けとして怪人に向かっていくようなヒーローだけではないのだ。

怪人と戦うことが嫌いだった。嫌々ヒーローとして働いていて、やる気は一向に出てこない。向上心のかけらもない。俺はそんなヒーローだった。

先ほども言ったが、ヒーロースーツを着たからと言って、爆発的に戦闘能力が上がるなんてことはなく、あくまでヒーロースーツは道具であって、使い方次第の代物である。もちろん上手に使えれば、超人的な能力を手にすることができる。才能があれば化け物にもなれる。自分には才能がなかった。並みのヒーローだった。

ヒーロースーツを脱いだら一般人と何も変わらない。確かにヒーロースーツがなくても、常人よりも遥かに高い戦闘能力を持つヒーローもいる。それは訓練の賜物だ。俺は向上心のかけらもなく、強くなりたいなんてなかったから、一般人の枠を出ることはなかった。

だから、今回Pストーンを取り返すと格好つけて言ったが、元ヒーローである俺の無双によって、簡単にPストーンを取り戻せるということはあり得ないのである。ましてやヒーロースーツがないとなると、一般男子大学生と何も変わらない。後方支援なら任せてほしい。二人をしっかりサポートしてみせる。

という一連の話をして、二人をガッカリさせたところで、部室への侵入が大学にバレないよう、朝になる前に外へ出ることにした。


大学近くのファミレスで朝を迎えた俺たちは、眠気に襲われ解散することになった。

並木と本橋は荒らされた部屋へと帰って、そのまま寝るとのことだったが、俺は授業に出ることにした。眠くても大学は通常営業だ。

一限が始まる前の人が集まり始める時間帯。キャンパス内は慌ただしく移動している学生の姿が多く見られる。

そんな中、空から悠々と俺の元へ鳥が飛んできた。

これだけの人の中で、よく俺を見つけるものだ。

「パンならないぞ」

「そうか」

そうか、と言いつつも鳥は俺の目の前に降りた。

「後じゃダメか? 鳥に話しかけていたら変な奴だと思われる」

「いつも以上に冷たいのう。お前はすでに面白い奴だと周囲の奴らに思われているから心配いらんよ」

「放っておいてくれ」

鳥相手に苛立つ。

すると突然、「きゃー、鳥ちゃんいたー」と声が聞こえてきたので、声のする方を見ると、女子数人が、こちらを見て、はしゃいでいる。

鳥は、鳥のくせして急に猫を被ったように、「ホーホーホー」と可愛げに近寄っていく。

「ほらー、賢いでしょ」

「すごいね」

「うん、可愛い」

女子がその姿を見て、さらに盛り上がる。

「ほら、いつものパンあげよ」

女子の一人がそう言うと、鳥の目の前にロールパンを置いた。

鳥は、「ピョロピョロピョロー」と聞いたことのない不思議な鳴き声を出して、パンをつつき始めた。

「バイバーイ」

女子達が手を振り去っていく。鳥は羽を広げて応えた。そして再びパンを食べ始める。

これは完全に餌付けされてる。

一瞬迷ったが、鳥に近づく。

「なあ」

「皆まで言うな」

「分かった」

俺も男だ。何も言わないことにする。また墓場まで持っていくことが増えた。

「小生も雄なんじゃ。そしてパンが好きなんじゃ」

鳥はそう言って、残りのパンを寂しそうに食べた。


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