妹というのはわがままなものである。と友人もそろって言う、だけどうちの双子の妹はたぶん規格外だ。私は姉の婚約者まではとるまいと思っていた己を深く後悔し、復讐することにした。
「お姉さまのケーキのほうが大きいですわ」
「同じですわよ」
「大きいですわ! 取り替えてください、取り替えてください、取り替えてください!」
普通15歳にもなって床に転がって泣くか? と思いますがうちの妹は平気でこれをやります。
私は口をつけてないからあげるわよと差し出しました。
「お姉さまありがとうございます!」
ええ、私と妹は実は「双子」ですの。
見かけはそっくりですが、甘えてくる妹のほうがかわいいと両親は妹をかわいがります。
それに惣領娘である私は厳しく育てられ、妹はひたすら甘やかされました。
友人たちに聞いてみたら親というものはそんなものだ、妹というものはわがままなものだと口をそろえて言いますが。
うちの妹はたぶん規格外ですわ。
まあそれは仕方ないとあきらめ、かわいくない子だといわれてきました。
しかしなぜか私が王太子殿下の婚約者となり、あの妹が後を継ぐのは無理と……さすがのお父様も判断し、適当な男を見繕って婚約させましたの。
まあ跡継ぎにふさわしい親戚の不細工な男性でしたので全力で妹は拒否していましたが……。
さすがに拒否しきれず、婚約は成立したのですが。
いえ妹があんな手に出るとはさすがに思ってなかったですわ。
ええ里帰りしていた私の部屋に深夜、妹の婚約者が忍んできまして、姉上の部屋でことをしたいとかそんな趣味があったとは、と言われて、まあ……。
なんとか未遂ですみましたが、私は閨に男を引き込んだ女、妹の婚約者をねとろうとしたということになり、父がねえ、妹の言い分を信じ、私との婚約破棄を願い出て、ええ…、そうですわ。跡取りである婿になる予定の婚約者は辺境にとばされ、私は修道院送りになりましたの。
王太子の婚約者は妹になりましたわ。
お父様、私は病になったとかなんとか言い訳をしてましたが、どうして私の言い分を信じてくれないのですか!
妹が婚約者に「お姉さまのお部屋で私は寝てますから、ぜひ夜に来てね」といったのはあいつから聞いてますのよ!
ああ、でも私は辺境送りの馬車に乗せられ、連れていかれました。
「……どうしたらいいのでしょうかねえ」
「ああ、そうだね、証拠がないなら作ればいい」
修道院にいた、隣国の第十三王子のリオルがニヤッと笑います。彼も政争にやぶれここに送られたらしいのですわ。でも男と女が一緒の修道院ってまずいと思いますが。
「あの妹は馬鹿ですが、悪知恵にたけます。証拠なんて」
「作ればいいんだよ」
くすくすと笑うリオル。そして彼は私の前に一つの便せんを取り出し、妹の筆跡がわかるものある? と聞いてきました。
「うーん、焼き捨てようと思ってましたが、妹からきた手紙が」
「ああ、自慢たっぷりのあれね。それ頂戴」
「ええいいですわよ」
私は手紙をリオルに渡しました。彼がありがとうとにやりと笑ったのを見たのですが、まさか……。
「リオル、何をしましたの! 私は家に戻れることになり、妹が婚約破棄され、辺境送りになったとお父様が!」
「簡単だよ、手紙を書いたのさ、君の妹の筆跡をまねてね、それを証拠としてだしたの」
リオル曰く、妹の筆跡をまねて、私の部屋に来てねという妹がそそのかした内容を書いたそうです。それを証拠として王家に出したと。
「え、でもそんなことをしたら家が……」
「妹一人を婚約破棄、辺境送りにすることで君のお父様とやらが手打ちにしてもらったみたいだよ」
「はあ」
「どうする戻る?」
「いえ戻りませんわ、もうあの家に戻るのはこりごりですわ」
「よければ君の両親にも復讐する?」
聞かれましたが人の手を借りて復讐はしたくないので、自分でしますわと言いました。
へえお手並み拝見といいますが、多少あなたの手を貸してくださいねと笑います。
「わかった、手を貸してあげるよ」
にやりとリオルが笑いました。私はお願いしますわと彼の手を取ってに同じように笑ったのです。
いい復讐方法を思いついたのでぜひ試してみますわ!
リオルが筆跡を真似できるならお父様の筆跡を真似れば……。お父様の横領の記録を作るとか、ええ、私はいろいろなお父様の悪事は知ってますしね。見てなさいお父様。
逃亡の手はずも整えましたから、連座になる前に私は逃げますわ!というとリオルも楽しそうに笑いました。
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