第7話:笹川神社と野良猫
さて、二つ目の扉を開けた時、正面に見えるものは神社の社であった。軒先の屋根に吊るされた鈴緒、その下の賽銭箱、石畳。先ほどの三田村工務店同様の広さで、床や壁は、境内の風景や社の様子がやはり精巧な絵で表されている。
辺りを見ながら、イツカが呟く。
「また、絵」
「あるのは、賽銭箱だけか……」
「いや、何かいる……猫か」
「猫だな」
一ノ瀬が見ていた賽銭箱の影に、野良猫がいることに気付いたヤマジとサトウ。毛色は三毛、こちらのことなど気にも留めずに、のんきにあくびなどしている。
「ネコちゃん……かわいい……」
「ねこだー、ねこねこー」
ヤマジが手招きすると、素直に応じて歩み寄っていく。その姿に、女性陣二人が食いついた。
一人感心ない女性が、社を見て言葉を漏らす。
「ここは……笹川神社、かしら」
「おや、知ってる場所かい?」
「えぇ、ちょっと、ね」
壁に描かれた絵のご神木を見ながら、サトウに答える。その様子が気にかかりつつ、サトウはヤマジの方に向き直る。丁度彼が猫を抱き上げるところだった。
「おー、よしよし」
されるがままに、大人しく抱き上げられる三毛猫。かなり人に慣れているように見える。
「あぁ、ネコちゃんとそんなお近づきに……うらやましい」
「動物の扱いには慣れてるからね」
「私もネコ触っていい?」
「あぁ、どうぞ」
「うわーふわふわしてるー」
「ミャー」
ヤマジからアイナへ、大人しく手渡される三毛猫。その様子を見ていると、アイナと目が合った。どう? とばかりに小首を傾げられるも、サトウは苦笑して首を振った。
「私は犬派なんだよなぁ」
「お姉ちゃんも、触ってみる?」
「え、あ、私も……触りたい……」
そうして視線を動かしてみれば、文太の人形を拾ったイツカと目が合った。
「⑤よ」
そう言って掴んだ足を揺らしてみせる。サトウは顎に手を当てた。
「人形①と④と⑤が揃った。残りは二部屋、②と③で決定かな?」
「特に何もないようだし、そろそろ次に行きますか」
ヤマジの言葉に促され、一行は再び中央のホールへと戻っていった。一ノ瀬の手に渡る途中だった猫は、ひらりと着地してその場に留まった。




