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7。



結局、晩餐には呼ばれなかったよ。


というか、ご飯も水も貰ってないのですが、どうしましょう?

ババア乾くよ、干物になるよ~。





誰か来るかな? どうかな? とソワソワしつつ、真夜中になっても誰も来なかった。

だから水筒の中身で喉を潤し、飴を一つ食べて寝ることにした。

お腹すいたけど我慢我慢……。


……熟睡したよ。

この状況でぐっすり寝るって……私ったらホントに……。

いや、我が家の硬い布団に比べ、ふかふかの絨毯で作った簡易ベッドが思いの外寝心地よかったせいだよ、うん。


それで朝になり目が覚めたから、いい加減誰か呼びにくるのかなぁー? 京子ちゃん達にも会いたいなぁー、とメイドさんと別れた廊下まで出て待っていたけど、誰もこないんだよ。


ね、ホントどうしよ?


イジメするにしてもさー、絶食させるんじゃなくて、残飯よこすとか、あるじゃん?

あ、残飯はちょっと嫌だな。カチカチのパンと薄~いスープとか、そこら辺でお願いしたい。


本気で死んでもいいと思われてんのかなぁ……凹むなぁ……。


まぁ、そうそう簡単に死ぬ気はないけどね。


死ぬ気なないけど死ぬかもしれないし、動けるうちにやれることやっとこうかな?



「…まずは家探しか。…なんか使える物は……ないかなぁ?……」



物置というマイルームに戻り、昨日探しきれなかった場所を発掘してみる。

保存食とかあればいいけど、さすがにそれは贅沢だろう。

でも餓死は困るからなんとか食料を手に入れなければならない。これ急務。

そのために使えそうな物を探す。



「うーん……桶とかは雨水溜められるか…。…こっちはなんだろ……あっ! キレイな箱発見! 何か起きてどうにかなったら売れそうだねー♪……売れるとこ知らないけど……」



部屋は好きにしていいって言ってたから、好きに物色する。


ランプと蝋燭があったから、火があれば夜も安心だね。

私喫煙者じゃないからライターとか常備してないんだよなぁ。

幸い昨夜は寒くなかったし、季節がどうなってるか分からないけど今んとこ凍死はしなさそうだけど。

そんで水が汲めそうなティーポットを発見。蓋がないけど割れてないからこれも使える。


それからメイドさんが着てたメイド服のパチモンみたいのも発掘。なんか色が違うんだよね。旧品? これは着替えとか変装に役立つね。

鎧とかも出てきたけど……廊下にでも飾るか?



「うん、こんなもんかな? 思ったより使えそうな物があるねー。ほんじゃ次は近辺を探検しますか」



っても城の中は昨日通ったし、そっちは後回し。


この物置部屋までの廊下、かなりぼろぼろで壁に穴とか開いてるじゃん?

あそこから外に出れないかな~?とね。


草が生えてたってことは、外が近いってことだよねー。で、広間から遠くて物置とかあるなら、台所とか馬屋とか火事場とか、そういう生産を担う場所が近いと思うんだよ。畑とかトイレとかもね。


城の中枢から離れるほど泥臭い仕事があるはず。

そんで泥臭いとこは警備が甘い。いろいろ大雑把!はなず!

ババアの偏見だけどな、結構当たってるんだぞ?


この世界じゃ違うかもだけど、とにかくそういうとこなら食料とかちょろまかせるだろう、うん。





残念な事に、穴から出たら目の前は壁だった。


多分城壁だろう目の前の分厚く高い壁に舌打ちしつつ、そんでも歩けるぐらいには幅のある通路なので進んでみる。

あー、でも日が当たる場所もあるわ、洗濯できるわ、洗濯道具ないわ、とつらつら考えながらゆくと、またまた残念なことに行き止まりだった。


しかし待てよ?

これ、なんとかすれば城壁の方を登れるんじゃない?


そう思って行き止まりまで足を進め、地面とか壁とかを調べてみた。

煉瓦?石? な石材が積まれた城壁と城壁。かなり頑丈そう。

城の僻地故にか手入れが成されてなく綻びがあるけど、元がしっかりしていた作りだろうから崩れたりはしないだろう。多分。


うん、なんとか引っかかる場所があるね。

ロッククライミングなんてしたことないけど、やってみる価値はあるでしょ?


だって、いつ追われる立場になるかわからないし……。

脱出経路は見つけておかねばね!



「……?」



城側の壁をペタペタしてて気付いたんだけど、わざとなのか、一角がずれる。

ずれるっていうか、外れる。

……なんだろう? 仕掛け?


地面すれすれのそこを「…ゴゴッ…」と動かしてみる。

……崩れたりしないし、なにより簡単に外れるんだから意図的に作ってある箇所だね。


外れたのは手のひらくらいの石材。そんなに重くない。

で、石材があった場所には穴があいた。

どうやら壁の向こうは城に繋がっているようだ。


地面に四つん這いになる形で覗いてみると、誰かの靴が見えた。



「っ!?……」



びっくりしたっー!

……良かった、声出さないで。


びくびくしながら室内をもう一度覗いてみると、椅子とか机とか樽とかも見えた。

作業場か誰かの私室だろうか?


うろうろと動く靴は女性だと思う。

メイドさんかな?


すると「……コンコンッ」と部屋をノックする音が響いた。


覗き見してる私のとこまで聞こえるって……この部屋、反響しやすいのか?



『……っ…ま…』


『だめ……い』



んー?

なんか揉めてる?

声からすると訪ねてきたのは男性らしい。

なんだろ、痴話喧嘩かな?

…………よし、耳を近づけよう。



『……いけません。職務に反しますわ』


『そう言わないで下さい。すこし、ほんの少し私に教えて頂ければ…お願いします、レディ?』


『……お客様のことは話せません。私にも矜持があるのです、わかってください、ブロー卿』



……痴話喧嘩じゃないな、派閥競争の情報合戦っぽい。



『…ぁっ……いけません……』


『頑なな女性だ。私が素直にさせてあげましょう』


『そんな、いけません……あぁっ……』


『この部屋に呼ばれた時点で分かっていたでしょう? ほら、こうして……』


『……っ……』



あ~……、いきなり昼ドラになった……。

なんだ、ただの逢い引き部屋かよ!



流石にそれ以上聞いてるのはおばちゃんといえどキツいのでさっさと退散し、引き返して反対側を探る事にした。




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